フリーゾーンであれば、100%外資系企業でも法人税なし
では、どのような戦略があったのか? ドバイは、20世紀初頭からイラン商人の移住を契機に湾岸諸国への再輸出や中継貿易地点になったため、空港、港湾、道路など経済に不可欠なインフラ整備を進めた。
1985年には「フリーゾーン」という名の経済特区を置き、100%外資系企業の設立を認可。2018年に消費税が導入されたが、法人税はなしのまま(ただし1年更新の営業ライセンス料は必要)で、所得やドバイの不動産取得には課税されない。
もちろん起業家への就労ビザも発給され、外国人でも不動産が取得でき居住ビザが発給される。このような優遇措置を設けたため、世界各国から企業や移住者がドバイを目指すようになる。
集めた巨額の資金で世界一高いタワー「バージュ・カリファ」、世界一の水量を誇る噴水「ドバイ・ファウンテン」、世界一の人工島「パーム・ジュメイラ」など度肝を抜くようなゴージャスな建造物を造り続けた。2021年は世界一高い場所にある360度ビューのインフィニティプール、2022年は世界一美しい建造物の一つとして「未来博物館」がオープンした。
バーチャルワーキングビザで、仮想通貨ビジネスも
街の中心部に砂漠の更地が残っているため、まだまだ開発の可能性がある。ドバイ政府は「ドバイ政府マスタープラン2040」を打ち出し、世界一住みやすい街を標榜。公共交通機関のさらなる整備、ビーチや緑地を増やす、歩道や自転車で通れる道を作るといった開発も進む(ドバイは歩道や自転車道が未整備)。
そのためにはドバイの人口を現在の330万人から580万人まで増やす計画も進行中で、今後さらに投資や移住のハードルが下がれば、ますます外国人が増える。地理的にヨーロッパとアジアの中間地点であるため、他の中東諸国、インド系やパキスタン系、ついでヨーロッパ系やアフリカ系住民が多い。
また、もろもろの条件をクリアすれば、1年間のリモートワークが可能なバーチャルワーキングビザが定住外国人以外におりるようになった。これは“スケールの大きなワーケーション”だと表せばイメージしやすいかもしれない。これを利用すれば、いきなり移住や起業をするには勇気がいる、という人にはお試し感覚でドバイに住むことができる。
バーチャルワーキングビザのスタートとほとんど同じタイミングで、ドバイ最大のフリーゾーン「DMCC」では仮想通貨を使ったビジネスライセンス取得が認可されるようになり、自由貿易港「KIKLABB」でも、ビジネスライセンスやビザの支払いに仮想通貨の使用が可能になった。
つい最近では最大手の不動産開発業者「DAMAC プロパティーズ」「エミレーツ航空」などでもビットコインやイーサリアムでの仮想通貨決済を受け入れた。さらにドバイで仮想通貨を法定通貨に換金した場合も税金がかからないので、法人でも個人投資家としても仮想通貨ビジネスが盛り上がっている。