老いとはどう向き合えばいいのか。精神科医として35年近くにわたり高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹さんは「どれほど気をつけて努力したところで、ある程度の高齢になれば認知症になることは避けられない。老いを受け入れて、できることを大切にするほうがよりよい人生を送れる」という――。
※本稿は、和田秀樹『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
「90歳でもこんなに元気に歩いています」はうらやましいのか
いま、老いに対する人びとのスタンスが二極化していると感じます。
一方は、老いとずっと闘いつづけなければならないと考える、「アンチエイジング派」です。いつまでも若々しくありたい、老け込みたくない、寝たきりや認知症にならないようにしたいと考える人たちです。
健康食品のコマーシャルで、「90歳でもこんなに元気に歩いています」「人間、心がけしだいでいくつになっても若くいられます」と語る人たちを見て、「私もそうなりたい」と思う人も多いことでしょう。
もう一方は、その対極の反アンチエイジング、「自然に老いる派」です。50歳そこそこで早くも「自然に歳をとりたい」と、反アンチエイジングを公言する女性芸能人も見かけます。
90代の女性脚本家が認知症になって生きることをよしとせず、安楽死を望む一方で、50代の女優が早々に老化を受け入れる姿勢を見せているというのは、何やら奇妙にも思えます。
いつまでも老いと闘いつづけるべきという考えのもと、美容医療やカツラの装着にも意欲的で、アンチエイジングに余念がないグループと、「ボトックス注射でしわをとるなんて許せない」と批判したり、「ヅラ疑惑」と揶揄したりするグループに二分されている現状があります。