年齢を重ねても健康であるためにはどうすればいいのか。順天堂大学名誉教授の佐藤信紘さんと非常勤講師の佐藤和貴郎さんの共著『順天堂大学の老年医学に学ぶ 人はなぜ老いるのか』(世界文化社)より、筋力低下を防ぐ生活習慣について紹介する――。(第2回)
高齢者を助ける介護者
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筋肉は60歳を過ぎると急激に量と質が落ちる

若いときは当たり前に動いていたのに、年をとって筋肉、骨や関節、神経など運動器の病気、痛みや衰えなどが生じると、辛かったり億劫に感じたりして、日常生活で動くことが徐々に少なくなります。運動器というのは、立つ、歩くといった日常的な動きを支える体の仕組み全体のことで、筋肉、骨や関節、神経などの働きが複雑に連動して成り立っています。どれか一つに問題が起きても体はうまく動きません。

動かないでいると、両足のバランスが悪くなり、やがて歩けなくなったり動けなくなったりして、要支援、要介護に進行していきます。そういうケースを予防して、生涯を通じて健康で自立した生活を営むためには、楽をしないで自分の体をよく使って暮らしていくことが大事です。

体を使い続けるには日常動作の基盤となる「筋肉」の維持が必要ですが、筋肉の量と質は加齢とともに低下していきます。

体を動かす筋肉である骨格筋の重量は体重の約40%を占め、体を動かすための大きな原動力です。その骨格筋は30歳を過ぎると10年ごとに約5%の割合で減少し、60歳以降は約10%の減少率になると報告されています。

60歳を過ぎたあたりから、急激に落ちてくることがわかります。

そうした加齢に伴って認められる筋肉の量と質の低下は「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」と呼ばれ、一般にも広く知られるようになってきました。

サルコペニアは、立ったり歩いたりするための移動機能(身体能力)が、筋肉、骨や関節など運動器の障害によって低下する「ロコモティブシンドローム(運動器症候群/通称:ロコモ)」の概念に含まれます。

また、老年医学の世界では、意図しない緩やかな体重減少、疲れやすさといった身体的な衰え、閉じこもり、経済力の不足といった精神・心理的、社会的な衰えなど、加齢に伴う様々な衰えをまとめて「フレイル」という言葉でいい表しています。

立ち上がったり歩いたりするには十分に強い筋肉が必要

筋肉(骨格筋)は骨や関節の周りにあって骨を支え、収縮することで関節の曲げ伸ばしを行っています。「立つ」「歩く」「しゃがむ」などの動きがスムーズであるためには、筋肉が十分に強く、しっかりとよく収縮する必要があります。

では、筋肉がやせて、筋肉量が減ってしまうとは?

筋肉(骨格筋)は、筋線維という細長い筋細胞の集合体です。筋線維の数は決まっていますが、歩いたりストレッチをしたり、よく動かすことで1本1本が太くなり、しっかり収縮するようになります。筋トレとは、この1本1本の筋線維を太く育て、動ける筋肉の量を増やすことなのです。