日本人は世界で最も座る時間が長い
市民向けの運動講座などで測定を行うと、すでに40代、50代でロコモが始まっているという結果の出る方がいます。話を聞くと、デスクワークなどで座る時間が長い場合が多いのです。
現代人の生活はとても豊かで便利になり、体を動かすことが昔に比べてとても少なくなりました。
2011年にシドニー大学などが行った調査によれば、世界20か国の座位時間の平均が1日約5時間であったのに対し、日本人の場合は約7時間と世界で最も長いことがわかっています。
日本人の勤務時間の長さが運動機能の低下につながっているといえるでしょう。「こんなに忙しくしているのに」と思っても、実際には一日中座って仕事をしているためにいつの間にか運動不足になっているのです。
座っていることは、喫煙と同じくらい体に悪いともいわれています。そうした生活習慣を続けていくと、ほぼ間違いなく筋力が低下していきます。特に女性はもともとの筋力が低いため、早めに気づいて生活を変えていくことが大切です。
たとえば、1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、生活の中でよく動くことを意識するだけで筋肉の動かし方が変わってきます。たとえば50代でこのように生活習慣を変えれば、70代になっても元気な生活は可能になります。そうした生活習慣を中年から心がけることが大事です。
何歳から運動を始めても筋力は高められる
ありがたいことに、何歳から運動を始めても筋力はアップします。順天堂大学ジェロントロジー研究センターでは、ロコモ予防・改善を目的とした運動教室に週3回程度参加してもらうことで、80代であっても筋機能が向上し、椅子から立ち上がるなど生活動作の改善が認められたという報告を行っています。
筋力を高めるトレーニングは、どの年齢、どの状態でもその人の持っている能力をある程度ぎりぎりまで引き出す必要があります。しかし高齢者のトレーニングでは転倒のリスクを伴うため、スクワットのような下肢の筋力を高めるトレーニングには安全性を担保するための工夫が必要です。
その上で、「たとえ90歳を超えても、その人にとって適切なトレーニングを行えば筋力は上がる。筋力が衰えた人も、今からでも間に合う」ということはぜひお伝えしたいところです。