筋肉は60歳を過ぎると急激に量と質が落ちる
若いときは当たり前に動いていたのに、年をとって筋肉、骨や関節、神経など運動器の病気、痛みや衰えなどが生じると、辛かったり億劫に感じたりして、日常生活で動くことが徐々に少なくなります。運動器というのは、立つ、歩くといった日常的な動きを支える体の仕組み全体のことで、筋肉、骨や関節、神経などの働きが複雑に連動して成り立っています。どれか一つに問題が起きても体はうまく動きません。
動かないでいると、両足のバランスが悪くなり、やがて歩けなくなったり動けなくなったりして、要支援、要介護に進行していきます。そういうケースを予防して、生涯を通じて健康で自立した生活を営むためには、楽をしないで自分の体をよく使って暮らしていくことが大事です。
体を使い続けるには日常動作の基盤となる「筋肉」の維持が必要ですが、筋肉の量と質は加齢とともに低下していきます。
体を動かす筋肉である骨格筋の重量は体重の約40%を占め、体を動かすための大きな原動力です。その骨格筋は30歳を過ぎると10年ごとに約5%の割合で減少し、60歳以降は約10%の減少率になると報告されています。
60歳を過ぎたあたりから、急激に落ちてくることがわかります。
そうした加齢に伴って認められる筋肉の量と質の低下は「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」と呼ばれ、一般にも広く知られるようになってきました。
サルコペニアは、立ったり歩いたりするための移動機能(身体能力)が、筋肉、骨や関節など運動器の障害によって低下する「ロコモティブシンドローム(運動器症候群/通称:ロコモ)」の概念に含まれます。
また、老年医学の世界では、意図しない緩やかな体重減少、疲れやすさといった身体的な衰え、閉じこもり、経済力の不足といった精神・心理的、社会的な衰えなど、加齢に伴う様々な衰えをまとめて「フレイル」という言葉でいい表しています。
立ち上がったり歩いたりするには十分に強い筋肉が必要
筋肉(骨格筋)は骨や関節の周りにあって骨を支え、収縮することで関節の曲げ伸ばしを行っています。「立つ」「歩く」「しゃがむ」などの動きがスムーズであるためには、筋肉が十分に強く、しっかりとよく収縮する必要があります。
では、筋肉がやせて、筋肉量が減ってしまうとは?
筋肉(骨格筋)は、筋線維という細長い筋細胞の集合体です。筋線維の数は決まっていますが、歩いたりストレッチをしたり、よく動かすことで1本1本が太くなり、しっかり収縮するようになります。筋トレとは、この1本1本の筋線維を太く育て、動ける筋肉の量を増やすことなのです。