移動する能力が衰える「ロコモティブシンドローム」

ロコモティブシンドロームは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」から、2007年に日本整形外科学会が作った用語です。

加齢とともに運動器の障害が起こり、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。この用語は、そうした状態が起こらないように啓蒙し、予防や改善するために生まれました。

運動器の障害というのは、筋力やバランス能力が低下したり、足腰に病気が起こったり、膝が悪くなったり、骨が弱くなったりすることです。この状態がロコモなのです。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。要支援や要介護になる原因のトップは、転倒、骨折や関節の病気など運動器の障害であることは、実はあまり知られていません。

便利な移動手段の多い現代社会では、「日常生活に支障はないから大丈夫」と思っていても、自覚症状がないままにロコモになっていたり、すでに進行したりしている場合が多くあることがわかっています。

また、高血圧など生活習慣病のある人は、比較的若い頃からロコモの原因となる病気にかかりやすいこともわかってきました。パーキンソン病などの神経変性疾患でも、筋力の低下を主としたロコモがよく見られます。

すでにロコモである人もそうでない人も、運動器の機能を長持ちさせてロコモを改善、予防し、健康寿命を延ばしていくことが大切です。

ロコモかどうかを確かめる日常生活の7項目

「片脚立ちで靴下がはけない」「家の中でつまずいたり絨毯の端に引っかかる、畳から立ち上がりにくい」、これらはバランス能力や筋力などの運動機能の低下を示しています。また、「階段を上がるのに手すりが必要である」場合に、念のために手すりを使うのではなく、筋力の衰えのせいで手すりがないと上がれない状態なら要注意です。

このほか、掃除機をかける、布団の上げ下ろしをするなど、筋力が必要な家事を行うのが辛いと感じたり、2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難なことはないでしょうか。2kgは1リットルの牛乳パック2本程度です。高齢者でも、この程度なら持ち運べるはずなのですが、それが辛くて困難になってきたらロコモの危険があります。

歩く距離やスピードが低下するのも、ロコモによる現象です。買い物などで15分くらい続けて歩くことができない、横断歩道を青信号で渡りきれないというときは要注意です。

図表1の7項目について、自分がロコモの可能性があるかどうかを調べるのが「ロコモーションチェック(ロコチェック)」です。7項目のうち、該当するものが1項目でもあれば筋肉、骨や関節などの運動器が衰えているサインです。