歩くだけでは筋肉の衰えを防ぐには不十分

ウォーキングは、中高年から高齢者に積極的に取り入れられ、肥満や糖尿病といった生活習慣病の予防や改善に効果的とされていますが、それだけではサルコペニアは防げないのでしょうか。

筋肉は、体を動かす「骨格筋」と、臓器を構成する「平滑筋」に大別され、骨格筋は髪の毛ほどの太さの線維の束になっており、線維束が伸びたり縮んだりすることで動けるのです。その線維束の中には、マグロのような赤身の「遅筋線維」と、ヒラメやカレイのような白身の「速筋線維」があります。

遅筋線維は長距離ランナーのごとく持続力があって疲れにくく、力の入り具合が相対的に弱い特徴があります。ウォーキングで使うのは、主にこの遅筋線維です。一方、速筋線維は短距離ランナーのごとく瞬発的な力を発揮します。一般的な人の太ももなら、遅筋線維と速筋線維は半分半分というイメージで構わないでしょう。

この筋線維を調べてわかったのは、年齢の影響を受けるのは速筋線維の方が大きいということです。そうであるなら、サルコペニアの予防や改善には、速筋線維をターゲットにするのが望ましいのです。つまり、速筋線維をあまり使わないウォーキングは、サルコペニア対策として十分ではない可能性があります。

日本の老人
写真=iStock.com/mykeyruna
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サルコペニアの予防には筋力トレーニングを

サルコペニアの予防や改善には、「レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)」が向いています。レジスタンスとは抵抗という意味で、片脚立ちやスクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動のことです。

自分の体重を利用して行うものと、ダンベル運動のようにダンベルや各種マシンといった器具を用いて行うものがあります。どちらの場合も、筋力の向上に合わせて、トレーニングの負荷を少しずつ重くしていくことが大切です。

高齢期に入ってからでも、その人の筋力に合わせて行えば、トレーニングの効果は出て、サルコペニアの予防や改善につながります。トレーニングは楽しく行うとともに、筋肉の疲れをとるために十分な休息、入浴、マッサージ、睡眠が大切であることはいうまでもありません。

毎日行うのではなく、2、3日に1回程度、週2、3回の頻度での運動が推奨されています。

無理のない範囲で継続的に行うようにしてください。