筋肉だけでなく骨や関節も老化する

サルコペニアは、ロコモにおける運動器の障害の、筋肉、骨、関節のうち、筋肉の障害のことですが、骨の障害で代表的なのは「骨粗しょう症」です。

骨粗しょう症とは、骨を壊す破骨細胞と骨を作る骨芽細胞のバランスが加齢によって乱れて破骨細胞の割合が多くなった結果、骨の密度が低下してしまう症状です。内部の組織がスカスカのスポンジ状になってしまうので、骨折をしやすくなり女性に多いのが特徴です。

また、骨の老化に伴って関節や軟骨組織も衰えてきます。

骨の末端部分にある軟骨組織は加齢とともにすり減り、やがて関節内で骨と骨がぶつかり合い、その刺激を受けて関節が炎症を起こすなどして変形してしまうことがあります。

この関節の障害では、膝の関節が変形する「変形性膝関節症」や、股関節が変形する「変形性股関節症」が代表的です。骨粗しょう症、変形性膝関節症、変形性股関節症もロコモの概念に含まれます。

身体的な衰えが精神的、社会的な衰えを引き起こす

フレイルという用語は最近かなり浸透してきました。フレイルとは、加齢によって体と心の活力が低下した、健康状態と要介護状態の中間に位置する状態です。

具体的には、筋肉の減少・肺活量の低下といった「身体的な衰え」、記憶力の低下・気分的なうつといった「精神・心理的な衰え」、社会的な孤立、経済力の不足、引きこもりといった「社会的な衰え」が挙げられます。これらはそれぞれ、「身体的フレイル」「精神・心理的フレイル」「社会的フレイル」と呼ばれ、フレイルはこれらが相互に影響し合って発症、悪化します。

加齢によって食欲が落ちることで栄養不足の状態になり、筋肉量が減少する(身体的フレイル)とします。すると、筋力や体力に加えて歩行能力が低下するため、外に出かけようという気力がなくなり(精神・心理的フレイル)、その結果、家に引きこもってしまう(社会的フレイル)というような関係です。

この用語は2014年に日本老年医学会が「フレイルティ(frailty)」の日本語訳として提唱したものです。もともとは「虚弱」などと訳されていましたが、それでは身体的、精神・心理的、社会的側面のニュアンスを十分に表現できていないといった理由から、「フレイル」と表すことになったようです。