社会的制裁に見せかけた私的制裁

【三浦】ただ、彼らはそういう言い方をするんですけど、その思いは単に私怨ですよね。公憤と言うより。週刊誌という公器がその私怨を晴らすための場になってしまっているということでもあって、私たちはそこは引いたところから見なきゃいけないなとは思うんです。これはリベンジなのね、ふむふむなるほどっていう程度で見ないと。

【中野】社会的制裁に見せかけた私的制裁の面があると。

【三浦】そうなんですよ。週刊誌記事って、社会的制裁と私怨が入り混じっているのに、読者が混同してしまっているところがある。誰かの私怨を晴らすお手伝いって見方もできる。

【中野】クレーム窓口みたいなね。

中野信子、三浦瑠麗『不倫と正義』(新潮新書)
中野信子、三浦瑠麗『不倫と正義』(新潮新書)

【三浦】民事訴訟がすごく面倒くさい手続なのに対して、編集部にタレ込むだけでいいわけですもんね。取材に応じさえすれば、私怨が晴らせて、自分は匿名の「A子さん」という形で身分を守られる。そういう安心感で機能しちゃっているところもあるんだと思うんですね。

よくもめごとの相談を受けてきた経験もあるから言うんですけど、相談内容にそれ、本当に法的に訴えられると思っているの? って思うことも多い。何らかの裁きが下されるべきだという信念持ってる人って、意外と多くて……でも、その「自分が嫌な思いをした」というのと法的な措置とは必ずしもつながらない。

そこで満たされない人々の思いの受け皿が週刊誌報道になっちゃっている面はある気がするんですよね。私が嫌なのは、それが社会にリンチを呼びかけるものになってしまうから。

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