「政権を選挙で奪取する」という野党の役割を見失ってはならない
第三世代と言えば、立憲の泉代表もそうである。2003年初当選で、玉木氏より少し先輩だが、同じ世代に属する政治家と言っていい。その泉氏は3月4日の記者会見で「国民民主は行き場がなくなっている苦しい状況だ。野党からは野党とみられず、与党からも与党とみられていない」と、かつて自らが所属した政党の苦境を嘆いてみせた。
泉氏も代表就任直後、メディアの「対決型野党か提案型野党か」という愚かしい喧伝に惑わされたか、若干「提案型」に触れそうな雰囲気があり、筆者もやや懸念した。実際、枝野執行部の時代に比べ、国会での「戦闘力」がややおとなしくなった印象はなくもない。
しかし、国民民主党の行動に対する泉執行部の強い怒りを見るにつけ、やはり野党の盟主の役割はしっかり自覚していたかと安堵している。
筆者の長年の懸案は、いつか第三世代が野党の中核となった時に「政策実現」を重視するあまり「政権は選挙で奪い取るもの」という野党本来の役割を捨ててしまわないか、ということだった。玉木氏は捨ててしまったが、泉氏は捨ててはいない、とみる。財務官僚出身の玉木氏と、第二世代である立憲民主党の福山哲郎前幹事長の秘書を務めた泉氏の「在野感」の違いなのだろうか。
かつての旧民主党第三世代の中で、細野氏らリーダーの多くが自民党に流れ、玉木氏が「与党化」の兆候を示す中で、野党第1党のリーダーに躍り出たのが泉氏だったというのは、ある意味必然だったのではないか。泉氏には、菅直人氏や枝野、福山氏ら第一、第二世代がどのように「政権を担える野党」をつくるために苦心してきたかを十分に引き継いだ上で、自分なりのリーダー像を構築してほしいと願う。
政権を担い得る野党勢力の構築のために必要なこと
そして筆者がもう一つ関心を示しているのは、第二世代たる前原氏の今後の動向だ。
前原氏は「希望の党騒動」を起こした張本人だ。現在の野党多弱の状況を作った責任もある。多くの野党政治家やその支持者に、言うに言えないわだかまりをもたらしてもいるだろう。
しかし、前原氏が今回の予算案をめぐる国民民主党の行動を機に、自らの「非自民性」を改めて強く自覚したのなら、もう一度「政権を担い得る野党勢力」をしっかりと構築するために、自分のなすべきことが見えてくるのではないか。少なくとも、現在の所属政党が前原氏自身の想いを体現できる政党だとは、筆者にはとても思えない。
旧民主党系議員の「第二世代」「第三世代」の違いは、ある意味「保守かリベラルか」といった政治路線以上に大きな溝となっているように、筆者には思える。玉木氏と前原氏の間に可視化された溝が、今後の国民民主党、そして野党全体にどんな影響を及ぼすことになるのか、見守りたい。