クロノタイプを意識した働き方と生き方

朝型、夜型は、それぞれメリットもあればデメリットもある。

そう考えると、まずは自分のクロノタイプを知り、特にパフォーマンスを上げたいときやコンディションを整えたいときほど、クロノタイプに合わせた生活スタイルに切り替えることが大事であることが理解できると思います。

その点では、各国における「サマータイムの失敗」も生活スタイルを考えるためのひとつのヒントとなるでしょう。

日本でも、1995年頃から何度か導入が検討されては見送られているサマータイムですが、本来は日照時間の短い高緯度の国で、夏の明るい昼間の時間を無駄にしないためにはじまった制度でした。そのため、導入している国は高緯度にあるヨーロッパの国が中心です。

ところが、ロシアでは2011年に、EU諸国でも2021年にサマータイムが廃止されました。

なぜなら、サマータイムによって数々の問題が噴出したからです。例えば、2007年にドイツで5万5000人を対象に行われた調査によれば、サマータイムに体が慣れるまでに1カ月もの時間がかかるうえ、就寝時刻をなかなか変えられないことで睡眠時間が減ることがわかったそうです。

またロシアでは、サマータイムへの切り替え時期に心筋梗塞による死亡者が増加するなどして、救急車の出動が一気に増えたといいます。イギリスでは、サマータイム切り替え後の1週間で交通事故が10.8%も増加したという調査結果があるほどです。

これはつまり、誰もが一律にフィットする生活スタイルはないということを物語っています。

ここ数年、わたしが産業医として担当する企業においても、フレックスタイム制を採用したり、在宅勤務や副業が許可されたりするなど、働き方の多様性がどんどん増しています。

コロナ禍以降には、多くの企業でリモートワークが採用されました。また、コロナ禍で縮小した転職市場も現在は活気を取り戻しつつあります。

このような時代の追い風もあるなか、例えば、「強い夜型」の人が夜間に働ける職種に変えることで、いまよりずっとご機嫌に働けて、ぐっとパフォーマンスを上げるチャンスもできるはずです。

夜型の人は朝方に強い光を浴びると朝型化する

もちろん、急にライフスタイルを変えることは難しいでしょうし、無理に変える必要もありません。クロノタイプの半分は遺伝以外の影響も大きく、光の影響を強く受けることがわかっているからです。

そこでまずは、光を浴びる時間を意識するところからはじめていきましょう。

朝型の人の場合は、朝よりも夕方から夜にかけて強い光を浴びると夜型化します。夜にも起きていられる体になるには、朝は遮光カーテンなどを使用して光が入りにくい寝室の環境を整えましょう。

太陽の光は雨や曇りの日でも非常に強いものなので、午前から午後4時くらいまでに外出する場合はサングラスを着用し、経路を選べる場合は地下や建物のなかを通っていくことをおすすめします。

そして、光が少し弱くなってくる午後4時以降は、外出時につけていたサングラスを外し、積極的に光を浴びます。室内で過ごす場合でもブルーライトカットの眼鏡はせず、休憩のときは外の見える窓の近くに行き、積極的に光を浴びてください。

夜型の人はこれとは逆で、朝方に強い光を浴びると朝型化しやすくなります。

「夜、眠気がこなくて寝つく時間が夜中の3時、朝は6時半起きで出社」というような人が、いままでよりも早い時間にすんなり眠れるようになるためには、可能なら朝は遮光カーテンではなく、朝日が部屋に入る環境で目覚めましょう。

朝は、特に屋内で過ごす時間を減らせればベストですが、日光を浴びるために出勤時にひと駅分歩くだけでも十分。ダイエットにも効果があって、一石二鳥です。