夫に浮気をされても離婚しない妻たちには、どんな理由があるのか。夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「夫のことは許せないが離婚はしないという妻たちの背景を探ると、4つのキーワードが見えてくる」という――。
結婚指輪を外す男性
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「今すぐ離婚はしない」という妻たちの事情

もしも、自分の夫が浮気や不倫をしていることを知ったら、あなたはどのような選択をするだろうか。

※本稿では、短期的な関係を「浮気」、長期的な関係を「不倫」とします。

妻からの相談の場合、その多くは「夫のことは許せない。すぐに離婚する方向で話を進める」あるいは「夫を許し、夫婦関係を修復する」という二択で考える傾向が見られる。ところが、なかには「白か黒か」で決着をつけない妻もいる。「夫のことは許さない。でも、今すぐ離婚はしない」という第三の道を歩もうとするケースだ。

「夫のことは許さない。でも、今すぐ離婚はしない」という決断をする妻たちの背景を探ると、「お金」「子供」「プライド」「夫への愛」という4つのキーワードが見えてくる。

たとえば、こんなケースがある。

※プライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

仕事を探してもアルバイトしかない

【CASE1】「自分の収入だけで生きていくのは不安」というケース

「本音は今すぐ別れたい。でも現実として、今の私の収入だけで子供と3人で暮らしていくには無理がある」と語るT子さん(40歳)は、短大卒業後に地元の同級生と結婚。実家の事業を継いだ夫と義両親が建ててくれた一戸建てに2人の子供と住んでいる。

夫の浮気に気づいたのは1年前。コロナ禍でリモートワークが増えたはずの夫の、度重なる休日の外出や不自然な出張を問い詰めたところ、本人があっさり浮気を認めたとのこと。「キャバクラで知り合った20代のお店の女の子に入れあげていたことがわかり、怒りより『コロナで大変な時期なのに……』という脱力感と嫌悪感でいっぱいになった」とT子さん。20年近くになる結婚生活でたまっていた夫への不満もここに来て一気に爆発。夫との離婚を考えるようになったという。

T子さんが今も離婚をとどまるのは「経済的な理由」だった。「社会人経験もなく専業主婦として家庭に入った私には、これまで自分で自由に使えるお金や時間はゼロ。夫の浮気が発覚した後、自立を考えて仕事を見つけようとしたが、私が希望する条件で採用してもらえたのは近所にできた回転寿司のバイトのみだった」。コツコツ働いて貯金が貯まるまで、「離婚したくてもできない」というのが現実だ。

「感情的には夫を許すことができないものの、今の生活を続けるためには仕方がない」と嘆くTさんだった。