<ウクライナ各地で住民が団結。武器を一切使うことなく、道路封鎖によってロシアの軍用車両・戦車の進行を妨げている:青葉やまと>
民間人のための軍事演習。ウクライナ・キエフ 2022年2月
写真=iStock.com/palinchakjr
民間人のための軍事演習。ウクライナ・キエフ 2022年2月

国土を兵力でじゅうりんするロシア軍に、ウクライナ市民が命懸けでノーを突きつけている。制圧のため主要都市へ向かう軍関連車両の車列を、非武装の市民らが人間の壁となって阻んだ。

南東部メリトポリの町では町に踏み入った軍用車の隊列を、十数人の丸腰の住民らが取り囲んだ。人々は車両の前に立ちはだかり、「侵略者!」「殺人者!」の大合唱でロシア軍の立ち入りを拒んだ。

この様子を収めた動画では、苛立った先頭車両の兵士の一人が車外に降り、空に向けて威嚇射撃を繰り返す様子を確認できる。人々は一瞬たじろいだ様子をみせるものの、次の瞬間には怒気を取り戻し、道路の封鎖を解くことはない。

兵士は諦め顔で車内に戻りサイレンを響かせるが、市民の怒りのシュプレヒコールにかき消されるばかりだ。後方から別の軍車両が市民の壁に迫ると、人々は車体を素手で押し返し、五角のせめぎ合いをみせた。一時は車両をジリジリと後退させている。

英『 i 』紙は、動画では「ウクライナ人たちが手で軍の車両を押し返し、一人は地面に横たわって道を阻んでいる様子を確認できる」と指摘している。動画8秒ごろ、画面奥の車両前で地面に寝そべり、身を挺して侵攻を阻害している姿がみられる。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のマシュー・ラックスムーア記者は自身のTwitterでこの映像を取り上げ、市民が車列を阻む「驚異的な映像」だと述べた。

北部チェルニヒウの町では、住民が戦車を相手に立ちはだかった。この戦車は方向を見失い、住民に道を尋ねたと報じられている。英イブニング・スタンダード紙は、非武装の市民たちによる「英雄的な瞬間」だと報じた。