エプスタインの死を報じる夜中のテレビニュース
10時をだいぶ過ぎても誰も私たちを捜しに来なかったので、よい兆候だと思った。だが私たちが席で会計を済ませていると、男性がふたり現れて私とエミリーをじっと見ながらカウンターに座った。ふたりにどこから来たのかを尋ねてみたら、中東と答えが返った。
セント・トーマス島の住民なら誰の顔でも知っているアイランド・マイクも彼らのことはわからず、私たちに退出するよう身振りで促した。私たちが立ちあがったのを見て、彼らは先にすっと出ていった。マイクのあとをついて外に出ると、男たちは立ったままタバコを吸っていた。マイクが「1本くれないか」と頼み、3人で雑談を始めた。
エミリーと私がホテルに向けて車を出したときもマイクはまだ彼らと話していた。私たちふたりは少し動揺していた。部屋に着くと、隣のエミリーの部屋から、ドアのまえに椅子やらナイトテーブルやらを積んでいるらしき音が聞こえた。
寝間着に着替えてベッドに倒れ込んだとたんにぐっすりと眠ってしまい、夜中に電話が鳴ったのも、エミリーがドアをノックしたのも気づかなかった。
エプスタインがニューヨークの拘置所の監房で意識不明になっているところを発見されたとNBCが報じていたのだ。
翌朝目が覚めて、携帯電話の大量の新着メッセージを見た瞬間、このあとエミリーとアイランド・マイクと一緒にボートで島に渡るのは無理だと悟った。
元汚職警官が殺害したのか、自殺を助けたのか
速報は大まかな内容だったが、それでも7月23日火曜日に、首に傷を負い意識を失ったエプスタインが監房の床に倒れているところを発見されたことはわかった。自殺を図ったのか誰かに襲われたのかは不明。当初の報道では、彼は他の受刑者から脅迫を受けていたため、より安全に保護拘置できる房に移ったとされていた。
記事によって見方は異なり、同房だった元汚職警官のニコラス・タルタリオーネがエプスタインを殺そうとしたという説がある一方で、逆に、エプスタインが首を吊ろうとしたのをタルタリオーネが助けたという説もある。
51歳のタルタリオーネは何も話さなかった。彼の弁護士によると、タルタリオーネはエプスタインと親しくしていたが、今回の事件とは無関係だと主張している。弁護士は、この元警官が拘置所の非人道的な環境について苦情を申し立てていたため、罠に嵌められたのではないかと考えている。
事件が起こったのは厳重警備の棟の房内だった。ふたりが収容された房に窓はなく、虫やネズミが動き回り、床には水たまりができていた。
今日まで説明されていないなんらかの理由で、メトロポリタン矯正センターは、4人殺しの容疑の大男と、卵形のペニスをもつひ弱な66歳でアメリカ一有名な児童虐待の容疑者を同じ房に押し込めたのだ。