予約したコテージは「殺されるのにぴったりの場所」
道案内で聞いていた白い壁のところの私道にようやくたどり着いてからも、家の扉までは私には90度近くに見える傾斜をのぼらなければならなかった。あたりの地形に慣れていてSUVを運転するアイランド・マイクが、私たちを誘導して坂道をのぼっていった。
濃い赤のライトに照らされたコテージは、外観も内部もエアビーアンドビーの写真とはまったくちがっていた。エアコンはなく、窓にはカーテン代わりにシーツがかかっていた。エミリーは写真を撮り、この建物が広告にあったようなロマンチックな島の保養場所ではないことを突きつけた。
だがもう夜も遅いので、なんとか一晩やり過ごして朝になったら新しい宿を探しにいこうと提案した。
エミリーははねつけた。
「ふざけないで。こんなところにはいられない。殺されるのにぴったりの場所だよ! 何かあっても誰にもわからない」
アイランド・マイクも、女性がふたりだけで泊まるような場所ではないと言った。町から離れすぎて携帯電話も使えない。彼は、ホテル探しがたいへんだろうから手伝うと申し出てくれた。セント・トーマス島は2017年9月にハリケーン・イルマで受けた壊滅的な打撃からまだ回復しておらず、多くのホテルがまだ修繕中だったり完全に閉鎖したりしていたのだ。私はその日の夜、ダウンタウンのバーで別の情報源と会うことになっていたので、言い争う時間はなかった。
この島が「児童性愛の島」と疑われたワケ
アイランド・マイクの案内で山を下りながら、反対側から車が突っ込んでこないようにと祈った。
携帯電話が早くつながってほしい、そうすれば、私の神経を鎮めてくれるブルース・スプリングスティーンを聴けるのにとずっと思っていた。
エミリーはそのときの島ののどかなコテージの写真をまだもっている。「殺人ハウス」と名づけて。
何カ月も前から、私はなんとか時間をつくってセント・トーマス島へ行き、エプスタインの「児童性愛の島」、ときに「乱交パーティーの島」と呼ばれる島を訪れたいと思っていた。セント・トーマス島の情報源からは、エプスタインが個人で所有するリトル・セント・ジェームズ島での彼のふるまいや、近くにあるより大きなグレート・セント・ジェームズ島を購入したときの資料が送られてきていた。
エプスタインの島が性的な人身売買に利用されているのではないかと疑う人は多かった。船かヘリコプターでしか行けない孤立した場所なので、ヴァーニジア・ジュフリーやほかの女性がその島で被害に遭ったと主張する性的虐待を隠れておこなうには絶好の立地なのだ。
自らを「料理人ジェームズ」と名乗る情報源とも会う約束をしていた。メールによると、彼はエプスタインについてよく知っているようだった。たとえば、ワークリリースの期間中にエプスタインが事務所に運ばせたケータリング料理の代金は10万ドルを超えていたとか。その料理の多くは、エプスタインを1時間監視するごとに42ドル以上を稼いでいた保安官代理たちの腹に入ったそうだ。