謎の情報源「料理人ジェームズ」とは誰なのか

セント・トーマス島に着いた夜、エミリーと私はアイランド・マイクの助けを借りてどうにか2部屋を確保し、町の小さなレストランで料理人ジェームズに会うために出かけた。

アイランド・マイクは私たちのことが心配だったのだろう、一緒に来てレストランの離れた席で見張ると申し出てくれた。私はとくに不安を感じていなかったが、いつものようにエミリーから質問攻めに遭った。

「その情報源ってどんな人?」
「どうやって知り合ったの?」
「じゃあ、はっきり言って、あなたもその人がどういう人物か知らないわけね?」

いまにして思えば、私はもっと下調べをしておくべきだった。

その日の夜、料理人ジェームズを待つあいだ、ローレン・ブックとメールのやり取りをしていた。

彼女はフロリダ州選出の上院議員であり、エプスタインの抜け穴だらけのワークリリースと関連してパームビーチの保安官事務所に不正行為がなかったかどうかを再調査するよう指示したグループの一員であり、さらに自身が児童虐待のサバイバーでもある。

料理人ジェームズは、おそらくは島内のレストランでの仕事を終えたあと、夜10時ごろに合流することになっていた。

待つあいだ、エミリーはますます神経質になった。私はローレン・ブック上院議員にメールしながら、ホテルに戻って記事を書こうかと考えていた。長い1日の終わりで、エミリーと私が何か食べたかどうかも思い出せないほど疲れていた。

夜のカフェ
写真=iStock.com/ilona titova
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性犯罪で25カ月服役した矯正施設の元受刑者

そのときブックから来たメールに、パームビーチのリック・ブラッドショー保安官にまつわることをほじくるな、と何度も脅迫を受けたことが書いてあった。私は興味を惹かれた。フロリダ州で強い力をもつロビイスト、ロン・ブックの娘を脅迫するとは大胆な。

その場でロン・ブックに電話して詳細を聞いた。彼は政治力を駆使して、誰が脅迫者なのかを突き止めようとしていた。

「しばらくまえに、ローレンにひどいメールを送りつづけたやつがいて、娘は命の危険すら感じていた。われわれは専門家を雇ってそいつが誰かを突き止めたんだ」とロンは言った。「料理人ジェームズと名乗ってた」

「料理人ジェームズ? まさか、本当に?」怯えた声を誰にも聞かれないように、私はレストランの外に出た。

まさにその名前の人物がエミリーと私に会うためにここに来ようとしているとロンに伝えた。

「すぐ逃げろ」。ロンが言った。

私は席に戻り、料理人ジェームズのメールアドレスを自分のメール履歴のなかで検索してみた。

信じられない。この人物は、私がエプスタインの記事を書くよりずっとまえの2016年から50回以上も私にメールを送ってきていた。最初は私の刑務所シリーズについてだった。彼はフロリダ州のスワニー矯正施設の元受刑者で、身に覚えのない性犯罪で25カ月服役させられたと主張していることがわかった。