世界的にEVシフトが進む中、ガソリン車のスポーツカーである「マツダ・ロードスター」の販売が伸びている。いったいなぜか。自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏は「ガソリン車の魅力を、今のうちにしっかり味わっておきたい、というユーザーのニーズが後押ししているのでは」と指摘する──。

2020年から販売が伸びるマツダ・ロードスターの謎

マツダ・ロードスターが売れているらしい。売れているといっても、販売ベストテンに入ったというような話ではなく、前年比で伸びている、という話である。

マニア層が顧客の大半を占めるスポーツカーは、発売当初は売れるものの、数年すると販売台数が急降下しその後は少ない台数で推移する、というのが通常のパターンである。

現行のND型ロードスターがデビューしたのは2015年5月だから、すでに7年近くが経過している。通常の車種であればモデルチェンジを迎えていてもおかしくない年数である。

さらに、この7年の間に小改良は何回か行われているものの、大規模なマイナーチェンジは一度もない。それにもかかわらず2022年1月は1122台を販売、前年比214.9%と倍増の勢いで売れている。これはマツダ3の販売台数(1188台)に肉薄し、トヨタC-HR(1072台)を凌駕りょうがする数字である。

筆者愛用のロードスター。
筆者撮影
筆者愛用のロードスター。サスペンション、ホイール、マフラー、アンテナなどを変更している。

販売が上向いたのは2020年の第3四半期で、それ以降ずっと前年比プラスを続けている。販売が上昇しているのは日本だけではない。アメリカでも2020年に前年比14%増、2021年は20%増と2年連続で上昇している。ヨーロッパも2021年(1~11月のデータ)は前年比48%増となっている。

若年ユーザーが倍増…

販売が上向いているだけでなく、ユーザー層も変化している。

このような実用性の低いスポーツカーはセカンドカーやサードカーとして購入する場合が多く、必然的に懐の豊かな高年齢層が購買層の中心となる。2020年のデータでは、50代以上が全体の58%、30代以下は15%しかいない。(以下ロードスターのデータはマツダより提供)

しかしそれが2021年9月以降のデータでは、30代以下が30%と倍増している。販売台数も増加しているので、上乗せ分は若年層の増加分、と捉えることができる。

最近の若者は車に関心がなく、所有よりカーシェアを好むといわれているが、ここではまったく逆の現象が起こっている。もちろん、超局所的な話で絶対的数字はたいしたことはないのだが。