日産は1月、長野県にある人造湖「女神湖」で電動車を中心とした氷上試乗会を行った。取材した交通コメンテーターの西村直人さんは「試乗した自動車のなかで、『ノート e-POWER 4WD』が特に安定した車両挙動を見せていた。それには理由がある」という――。
日産の電動車を中心とした氷上試乗が行われた
画像提供=日産
日産の電動車を中心とした氷上試乗が行われた

都心の雪は、交通網の弱さを露呈した

2022年は年初から東京都心部でも雪に見舞われた。降雪量は予報よりもかなり少なめであったが、それでも都市部の交通網は弱さを露呈する。たとえば首都高速道路での一部区間では、長時間にわたり道路上で足止めを余儀なくされた車両も多かった。

その日の最低気温が7度を下回る場合、スタッドレスタイヤの装着が推奨されている。ノーマルタイヤのゴムは7度付近から寒さにより一時的な硬化が進み、路面を捉えるグリップ力が低下してくるからだ。

スタッドレスタイヤはそうした寒さの中でも路面を捉え、さらに雪や凍結路でも路面と接地するトレッド面のパターンやゴムの成分に工夫を凝らし、ノーマルタイヤ以上のグリップ力でクルマの「走る・曲がる・止まる」を支える。

とはいえ過信はできず、やはりタイヤそのもののグリップ力(摩擦円)を超えると仕事はできない。先の首都高速道路ではスタッドレスタイヤの装着車も多かったと思われるが、緩やかな登り坂を登り切れない車両が重なったこと、さらには坂道であることから再発進ができなかったことなど、これらが足止めの要因であったとの報道もある。

「走る・曲がる」を大きく支える4WD

4つのタイヤに駆動力が掛けられる4輪駆動車(以下、4WD)は、前述した「走る・曲がる・止まる」のうち、主に「走る・曲がる」を大きく支える。

さらに4WDでは物理的な限界はあるものの、状況により「止まる」も支えられる。雪道や凍結路などでは装着しているタイヤの性能が大いに関係するが、4WDの方式や走行状況によってはアクセルペダルを戻した際に発するエンジンブレーキが4つのタイヤに掛かるため、FF(前輪駆動車)やFR(後輪駆動車)と比較すると安定した制動力(ブレーキ力)を発揮しやすいからだ。

昨今、耳にすることの多い電動車でも、内燃機関を搭載したHV(ハイブリッド車など)であればシステム上はエンジンブレーキが掛けられる。

電動車とは前述したHVのほか、PHV(プラグインハイブリッド車)BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)のことで、軽自動車や輸入車などに多いMHV(マイルドハイブリッド車)も、現時点では電動車の枠組みだ。つまりエンジン(内燃機関)を搭載しているPHEVやMHVでもエンジンブレーキが働くのだ。