電気自動車(EV)を世界に先駆けて発売したのは、三菱や日産という日本の自動車メーカーだった。ところが、現在のEV市場で日本勢の存在感はほとんどない。元東京大学特任教授の村沢義久さんは「このままでは日本車は消滅してしまう」という――。

※本稿は、村沢義久『日本車敗北 「EV戦争」の衝撃』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

日産の「リーフ」
日産の「リーフ」(日産自動車HPより)

「i-MiEV」と「リーフ」で世界をリードした勢いはどこへ

日本市場における電動車の新車販売比率は、PHVを入れても1%にも満たない状況だ。

2009年に三菱が「i-MiEV」を、2010年に日産が「リーフ」を発売して一時は世界をリードしながら、日本は今やEV後進国になりつつある。

一方、世界の自動車メーカーはEVシフトを進めている。2020年におけるヨーロッパと中国における電動車(EV+PHV)の新車販売シェアはそれぞれ7%と5%に達した。

世界全体でも3%を超え、EVはいよいよ本格普及期に入った。その中で日本メーカーだけが置き去りにされつつある。

「恐竜企業」の進化が続々と始まった

テスラが「ロードスター」を発売してEV時代の幕開けを宣言したのが2008年。それから現在までの12年間、日本メーカーに限らず、既存の大手自動車メーカーの動きは鈍かった。

一時は、日産「リーフ」がトップグループに入り健闘したが、2020年には年間販売台数が前年比で20%も低下した。世界ランキングでも2019年の3位から、2020年には7位まで下がっている。他の大手メーカーはもっと消極的で、EVをほとんど無視したままだった。

潮目が変わったのは2020年秋のことだ。急成長するテスラ、NIO等に対抗して、フォルクスワーゲン(VW)が9月に純粋EV「ID.3」を発売。VWは、わずか3カ月で5万7000台の「ID.3」を売り、メーカー別ランキングでテスラに次ぐ2位の座にまで上がった。

既存の大手自動車メーカーがEV化に本腰を入れ始めた。いわば「恐竜企業の哺乳類化」が始まったのである。

VWから続いて発売された「ID.4」も出足好調だ。アメリカ市場には2021年3月半ばに第1便が到着。さっそく早期購入者からの高評価が聞こえ始めている。

革命の火は大西洋を越えてアメリカにも広がった。一時は衰退企業の代表のように見られていたGM(ゼネラルモーターズ)だが、2021年1月末に内燃機関車廃止に向けた野心的な方針を発表し、評価が急上昇している。GMは、2020年代の半ばまでにEVを30車種投入し、ガソリン車、ディーゼル車を2035年までに廃止するというからただごとではない。