「日本で売れるかわからない」は間違っている

日本では、いまだに「EVだけが電動車ではない」「HVの方が現実的だ」などと言われることがある。

だが、そんなのんきな議論が交わされているのは、日本が電動車(EV+PHV)の普及率わずか1%程度の「ガラパゴス」であり、外の世界を知らないからだ。

「世界で受け入れられても、日本で売れるかどうかわからない」という意見もあるかもしれない。だが、それは間違っている。

日系メーカーの年間総生産台数は国内、海外合わせて2千数百万台だが、そのうち国内販売台数は500万台程度。世界で売れなくなれば日本車は滅びる。

むしろ、EVが日本で売れなくても、世界で売れるなら、日本車メーカーはEVに舵を切るしかない。

躊躇ちゅうちょする日本メーカーを尻目に、素早く変身しようとしているのが、VW、GM、フォードなど世界の自動車メーカーだ。

中でもVWの動きはGM、フォードを凌ぐ激しさだ。

まずは、2021年3月15日、オンラインで開催した「Power Day」の会見の場で、バッテリーへの注力と製造工場の大増設計画を発表した。

続いて6月28日には、2033年から2035年までにヨーロッパで内燃機関車から撤退し、しばらく遅れて米国と中国でも撤退するという目標を発表している。

VWの意気込みは、矢継ぎ早にEVを投入していることからも明らかだ。

欧州圏で「テスラ超え」したVWの快進撃

コンパクトSUVタイプの「ID.3」は、EV専用に開発されたMEB(Modularer E-Antriebs-Baukasten)と呼ばれる共通プラットフォームを使った「ID」シリーズ第1弾だ(ID=Intelligent Design)。

「ID.3」は2019年9月のフランクフルト・モーターショーで発表され、1年後の2020年9月からドイツ国内で販売開始。人気は上々で、前述のようにわずか3カ月で約5万7000台を販売し、世界電動車年間販売台数ランキング第6位に入った。

ヨーロッパだけなら、テスラ「モデル3」を3割以上引き離し、2020年12月の月間販売台数トップに立った。

バッテリー容量は、「Pro S」バージョンで77kWh(ネット)、航続距離はWLTP基準で550kmという。最も厳しいEPA基準だと490kmぐらいのはずだ。

VWは続いて「ID」シリーズ第2弾となるSUVタイプの「ID.4」を発表。こちらも「ID.3」と同じくMEBプラットフォームを採用している。

「ID.3」は主としてヨーロッパ市場向けだが、「ID.4」はアメリカと中国市場も重視しており、両国での現地生産も計画されている。

こちらも動きは素早く、ヨーロッパでは2020年末から納車開始。アメリカには、2021年3月に第1便が到着した。

「ID.4」にはいくつかのバージョンが用意されているが、最初に発売されたRWDタイプのヨーロッパ向けは、モーター出力146馬力と、168馬力でバッテリー容量52kWh、201馬力で77kWhの合計3バージョンがある。