残念ながら、多くの企業で人事部は、本来やるべき仕事をせずに秘密結社のように陰で力を行使するか、仲良しクラブの延長のような活動をしています。
人事部は会社の「キラー・アプリケーション(勝利の立役者)」なのです。誰を採用し、誰を育成し、誰を昇進させ、誰を解雇するかという決定ほど重要な要素があるでしょうか。ビジネスはいわばスポーツのようなもので、最優秀選手を競技に送り出し、団結させて戦わせるチームが勝利します。
しかし、今、多くの企業で人事部よりCFOが強い権限を持っています。
あなたがサッカーチームのレアル・マドリードのオーナーだとしたら、会計責任者との会議と、選手の補強や移籍を決める編成部長との会議、どちらに時間をかけますか。会計責任者は財務データを教えてくれます。でも、編成部長は勝つために何が必要か、個々の選手の能力とどこで優秀な選手を見つけるかを知っています。
これこそが人事部のあるべき姿なのですが、通常そうではありません。私たちがそれを痛感したのは、メキシコシティで人事の専門家5000人を前に講演したときです。私たちはこう質問しました。「人事部にCFOと同等の権限が与えられている企業で働いておられる方は何人ぐらいいらっしゃいますか」。沈黙のあと50人足らずが手を挙げました。
以来、私たちは人事部がなぜ隅に追いやられているのかを考えてきました。そして前述の、少なくとも2つの対極的な実態があることに気づいたのです。