かつては、スポーツの観戦チケットやディズニーワールドへの招待旅行、豪華なディナーなどで顧客のロイヤルティ(愛顧)を勝ち取ることができました。顧客の夢や悩みに耳を傾け、顧客を訪問して自社製品が彼らのニーズにかなっているかを探り、問題を解決していたものです。競争が激しい市場の場合には、製造やデザインの面でも差別化を行っていたでしょう。
しかし、インターネットの登場で、価格設定が透明になった今、購買がグローバルに行われ、買い手優位の世界にどんどん変わりつつあるのです。
それでも、かつての顧客ロイヤルティがなくなったわけではありません。一方通行のものから双方向のものに定義し直そうとしているだけです。
一方通行の顧客主義では、売り手は競争力のある価格や優れたサービスを提供し、見返りに顧客は売り手から繰り返し購入します。しかし、ライバルがより安い価格や高い品質を手に登場したら、すべてやり直しです。失った顧客を取り戻すには、新規顧客獲得と大差ない努力が必要なのですから。
一方、双方向のアプローチでは、売り手と顧客は「相互献身」の関係にあります。売り手は価格や品質やサービスだけで顧客の期待に応えるのではなく、より高い生産性や迅速な生産、革新的な製品を提供することで、顧客に対するロイヤルティを示すのです。
売り手の存在が不可欠になるような何かを提供できる場合のみ、売り手も揺るぎない顧客を獲得できるのです。
あなたは「我々はそれをやった。専用工場をつくって、特別パッケージをデザインした」と思うかもしれません。
でも、そのサービスは顧客にとって、ビジネスを根底から変えるようなものだったでしょうか。そうではなさそうですね。そうであれば顧客はあなたの会社から離れなかったはずですから。
当面の需要を満たすだけでなく、顧客を長期にわたり成功させることに貢献すればするほど、顧客もあなたの会社に強く貢献してくれるのです。