海外旅行に行くと「時差ぼけ」になるメカニズム

体内時計のズレがはっきりと認識できるのは、いわゆる「時差ぼけ」といわれる状態です。

ご存じのように、ヨーロッパと日本、アメリカと日本というように、何時間も時差のある地域を飛行機で短時間に移動すると、その直後に時差ぼけが襲ってきます。

体験したことのある方ならわかるでしょうが、概日リズム障害と同じような症状があらわれてきます。昼間なのに頭がぼんやりとして眠気が襲ってきたり、注意力が散漫になってうっかりミスやケガをすることもあります。逆に、夜なのに頭が冴えて眠れなくなってしまいます。まさに体内時計がズレてしまった状態です。

つまり時差ぼけは、生活リズムと親時計とのあいだにズレが生じ、さらに親時計と全身の子時計のあいだに時間的なズレが生じてしまうことによって起こる、全身の機能の調節不全なのです。

もっとも、こうした時差ぼけによる体内時計のズレは1回きりのものです。2、3日、長くても1週間ほどで治ります。

フライトを待つ女性
写真=iStock.com/Alina Rosanova
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じわじわと調子が悪くなる体内時計のズレ

それに対して、日々の生活からくる体内時計のズレは、ちょっと事情が違ってきます。海外旅行とは違って、一度に何時間もの時差を生じるように極端にズレるわけではありません。少しずつズレていくため、その影響がすぐに表面化するような自覚症状は発生しません。

しかし、その一方で、毎日のように生活時間と体内時計(親時計)のズレが持続していくために、親時計と子時計のあいだのズレも大きくなり、じわじわと健康な状態を保てなくなっていきます。まさに「なんとなく不調」としてあらわれてくるのです。

日々の生活からくる体内時計のズレは、時差ぼけがずっと続いていく状態を想像するとよいでしょう。眠気や運動能力の低下、注意力・集中力の低下などを招き、そのズレが蓄積していくとミスや事故が多くなってしまいます。とくに、車の運転をする場合には、注意が必要な状態といってよいでしょう。

子どもから大人まで、体内時計のズレが生じていると、精神的にも肉体的にも、本来持ち合わせている機能や能力を十分に発揮できなくなるのです。