1000キロカロリーを超える焼きそばは下北沢で受け入れられるのか
問題は麺にあるように感じた。簡単に噛み切れないときがある。麺がからんでしまい、箸で取りづらい。病みつきになってくれればいいが、好き嫌いがわかれるだろう。
またオイリーな味つけも、全体の味を重くしている。食べていると途中からソースより油の味が強くなり、香ばしさが死んでしまっている。味に単調さを感じさせない工夫が必要だった。
おそらくすでに、ぼくが指摘した問題点は認識していたのだろう。テーブルにからしマヨネーズを置き、セットにスープをつけるなどの箸休めも検討されたが、黒田が最終的にこだわったのはB級グルメのジャンク感だった。
黒田の話を聞きながら、ぼくはどこかスッキリしないものを感じていた。一番はこの重みだった。健康志向が強くなっている風潮のなかで、一食1000キロカロリーを超えるような焼きそばを食べたいと思う客が本当にたくさんいるのだろうか。
たしかにほかの店にない味ではあるが、継続して食べさせるには、味だけでない要素が必要な気がしていた。とくに下北沢の消費の中心は、若者と女性だ。彼女たちに訴えかけるようなキーワードが必要だった。
ぼくは考えを整理すべく、リュックサックからノートとペンを取り出した。店に着いてから、まだ上着も脱いでいなかった。(続く)