中国の高度経済成長期は終焉を迎えたか

しかし、8%の実質GDP成長率の維持は難しい。2015年以降は年を追うごとに実質GDP成長率のトレンドが低下している。つまり、中国経済の減速傾向が明らかになり始めた。その主たる要因に生産年齢人口の減少や、不動産やインフラの過剰投資がある。コロナ禍によって2020年単年の実質GDP成長率は2.3%に低下した。2021年の実質GDP成長率は前年の落ち込みの反動によっていくぶんか上振れたのち、2022年の成長率は5%前後に低下するだろう。

2021年12月に開催された中央経済工作会議では2022年の実質GDP成長率の目標値を、国務院発展研究センターが5.5%前後、政府系シンクタンクの中国社会科学院は5%以上と提言したと報じられている。2020年から2021年にかけて中国の高度経済成長期は終焉を迎え、5%程度の成長期(巡航速度の経済成長環境)に移行した可能性が高い。

経済回復を遅らせている不動産市況の悪化

足許では中国経済の減速傾向がより鮮明だ。その要因は大きく2つある。最も深刻な問題は不動産市況の悪化だ。住宅需要や投機熱の高まりで不動産価格が上昇しているのであれば、地方政府は中国恒大集団などの民間不動産業者に土地を売却して財政資金を確保することができた。その資金を用いて地方政府はインフラ投資などを行い、雇用を生み出した。

それによってGDP成長率の目標を達成することが共産党政権の求心力の維持と地方の共産党幹部の出世を支えた。しかし、2020年夏場に不動産融資規制である“3つのレッドライン”が導入されて以降、不動産業者の資金繰りは急速に悪化し不動産投資による経済成長の実現が困難になった。それに加えて、中国国内の理財商品市場が下落して個人の金融資産が棄損する懸念も高まっている。1月4日には広州市の恒大集団ビルの前で理財商品の返済を求める個人投資家の抗議活動が起きた。不動産市況はさらに悪化する可能性が高い。