不動産市況の悪化、政権の経済圧迫、感染再拡大…

2021年7~9月期、わが国の実質GDP成長率は前期比年率で3.0%のマイナスだった(速報値)。同じ期の米国とユーロ圏のGDP成長率はプラスだ。主要先進国の中でわが国経済の弱さは際立つ。わが国経済の大黒柱である自動車の生産が大きく減少したことに加えて、中国の景気減速で同国向け輸出が伸び悩んだことが大きな要因である。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は22日午後、山東省の省都・済南市で黄河流域の生態保護と質の高い発展を深く推進することに関する座談会を開き、重要演説を行った。=2021年10月23日
写真=中国通信/時事通信フォト
習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は22日午後、山東省の省都・済南市で黄河流域の生態保護と質の高い発展を深く推進することに関する座談会を開き、重要演説を行った。=2021年10月23日

世界経済を見回しても、中国の経済成長の減速は顕著だ。中国経済の減速の主たる要因は、不動産市況の悪化、習近平政権による経済圧迫、およびデルタ型による感染再拡大だ。それ以外にも、米中対立の先鋭化懸念など中国経済の下振れ懸念を高める要素は多い。中国経済の先行き不安定感は高まっている。

ここへきて、2022年の中国のGDP成長率予想を下方修正する専門家が増えている。不動産市況の悪化などに加えて、中国では経済全体で資本の効率性が低下し生産年齢人口も減少している。それは、中国の自動車需要などの取り込みなどによって、景気の持ち直しにつなげてきたわが国経済にマイナスだ。当面、中国経済は厳しい状況が続き、世界経済の足を引っ張るだろう。

建設されたマンションは「全人口の2倍分」

中国の不動産市況が悪化している。中国の中央と地方政府にとって、経済と財政運営のために土地売却の重要性が高まってきた。中国では政府が土地の使用権を不動産業者に売却する。それを一般に土地売却と呼ぶ。地方政府の収入に占める土地売却収入は20%を超えている。

これまで、地方政府はインフラ投資などを進めて、経済成長目標の達成に取り組んできた。経済成長目標の達成は地方の共産党幹部の出世に影響する。土地使用を認められた企業は借り入れを増やしてマンション建設を進め、2000年代前半から不動産投資は増加した。中国経済の高成長を背景に「未来永劫、不動産価格は上昇し続ける」という成長期待が大きく高まり、“不動産バブル”が発生した。

リーマンショック後、中国は4兆元(当時の邦貨換算額で56兆円程度)の経済対策を打ち、基本的には金融政策も緩和的に運営した。それがカネ余りを生み、強い成長期待を背景に不動産投資・投機が勢いづきバブルは膨張した。その結果、“鬼城”と呼ばれるゴーストタウンが増えた。2016年時点で中国の人口約14億人に対して34億人分の住宅が供給されたと報道されたほど、住宅供給は過剰だ。その状況下、共産党政権は融資規制の調整などによって不動産市況の過度な加熱と悪化を防いだ。中国経済全体が不動産バブルの熱気に下支えされた。