日本円にして債務34兆、恒大危機が“道連れ”にするもの
中国の不動産大手恒大集団の債務問題が世界の注目を集めています。総額約2兆人民元(約34兆円、中国のGDPの2%程度)もの債務を抱え、その返済の資金繰りのめどがつかなくなっています。
習近平政権による「共同富裕」という、貧富の格差是正政策が恒大の業績に大きく影響を及ぼしたとのことです。今、中国の一部の都市では、一般のマンション価格が平均年収の数十倍するところまで上昇し、大きな社会問題となっています。
背景にあるのは投機資金の流入です。それを是正することも「共同富裕」の大きな目的であるため、中国政府と中央銀行である中国人民銀行は、昨年8月に大手不動産会社に対して、総資産に対する負債の比率を70%以下にすることを含めた財務指針の適用を開始しました。過剰な借入れによる不動産投資を抑制する動きに出たのです。それにより、過剰債務が懸念される恒大などの企業の資金繰りが危機的状況に陥りました。
恒大危機は、恒大への融資先のみならず、恒大が発行する理財商品(金融商品)を買っている投資家、さらには、恒大が手掛ける開発プロジェクトへの資材供給会社やマンション購入者などへの大きな影響が出ています。
恒大は、中国の230都市以上で1200以上のプロジェクトを手掛けており、債権者の中にはマンション購入契約をしてお金を払い込んだものの、建設が途中となっているケースも少なくありません。恒大の社債などを持っている国内外の投資家も戦々恐々としている状況です。
中国政府は、恒大問題の収束に手をこまぬいているわけではなく、恒大を事実上管理下に置きながら、一部のマンション購入者などを保護しようと努めています。しかし、理財商品の購入者など、金融商品を保有する者は保護しないことは十分考えられます。実際、利払いが滞り始めています。
恒大がデフォルト(債務不履行)になることは、ある程度市場も織り込み始めていると思いますが、私が懸念しているのは、恒大のデフォルトをきっかけとして、これまでほとんど野放しだった中国の不動産バブルの崩壊が起こることです。
そうなった場合に、中国経済、世界経済にどれくらいのインパクトがあるのかを考えなければなりません。その際に参考になるのは、過去の金融危機の事例です。
ここでは、日本のバブル崩壊とリーマンショックを分析しますが、どちらも当初は、その影響を小さく見ていたことが、その後の傷口を大きくし、甚大なダメージを与えたことを教訓にしなければなりません。