恒大危機に中国政府はどう対応するか
そして、今回の恒大の危機です。恒大が破綻してもその負債総額は、冒頭で述べたように中国の名目GDPの2%程度ですから、それだけだと何とかなるかもしれません。
しかし、中国全体が不動産バブルの中で、そのバブルが崩壊すると話は別です。恒大同様、財務内容が悪化した不動産会社が中国には多くあります。また、中国では地方政府の隠れ債務問題も、前々から強く指摘されています。その額は、恒大などの不動産大手の債務額とは比べ物にならない額です。
日本のバブル崩壊やリーマンショックで見たように、バブル期やその崩壊初期には多くの人が、その崩壊のインパクトを過小評価しがちですが、バブル崩壊に際しては、そのインパクトは予想を大きく超え、結局は政府が多額の資金を供給しない限りバブル崩壊を食い止められないということになります。
中国政府も、日本のバブル崩壊やリーマンショックを研究しているはずですから、そのことは十分に承知していると思われます。しかし、中国政府としては、「共同富裕」のスローガンの下に、富裕層や大企業優遇から大きく舵を切っている時期だけに、習近平政権としては、恒大危機への対応は、政策の整合性からしても難しい問題を抱えています。
恒大が抱える約2兆元の債務の約半分は、「買掛金」だと言われていますが、買掛金を救済することで零細事業者などを保護するということや、一般のマンション購入者を保護することで事態を収拾しようとすることも考えられます。
ただ、それだけでバブル崩壊を食い止められればいいですが、中国主要都市で投機対象となったマンション価格が暴落することとなると、中国経済に大打撃を与えかねません。
先にも述べたように、一部の都市ではマンション価格が平均年収の数十倍を超えているという異常な状況ですから、マンション価格の暴落が起これば、その反動は計り知れないのです。その場合、日本の不動産市況や日本経済にも影響が及ぶことも考えられます。
また、理財商品などの金融商品や、融資・社債などの債権者の保護は行われないでしょうから、恒大以外の不動産大手も破綻するということになれば、中国の金融市場の大混乱は避けられません。
いずれにしても、しばらくは恒大と中国政府の動きからは目が離せません。