2021年7~9月までは足踏みの日本経済
年明け以降、新型コロナウイルスのオミクロン株の猛威が日本を襲っています。欧米では、日本より先にオミクロン株が猛威をふるいました。米国では昨年から感染者が増え始め、最近では1日で100万人もの感染者を記録する日もあります。英国やフランスでも、多い日には数十万人の新規感染者の報告があります。日本では、この原稿を書いている時点(1月14日)では2万人弱ですが、今後大幅な感染拡大が懸念されています。
心配なのは、欧米経済に回復が出遅れている日本経済が、「第6波」とも言われ始めたこのコロナウイルスの新たな拡大で、腰折れがはっきりすることです。
先のこの連載でも説明しましたが、2021年の日本の実質GDP成長率は、1~3月がマイナス2.9%、4~6月がプラス2.0%、そして7~9月がマイナス3.6%と、マイナス、プラス、マイナスと足踏み状態が続いています。
一方、ユーロ圏や米国、中国、台湾、シンガポールなどで7~9月がマイナスの地域や国はありません。ユーロ圏では4~6月、7~9月と連続成長、シンガポールを除くアジアの主要国や米国ではここ5四半期連続で成長しています。
これは、私は日本ではワクチン接種が欧米などに比べて数カ月間遅れたことが大きな原因だと考えていることは、本連載ですでに述べたとおりです。
少し希望が見えた矢先のオミクロン株
そして、2021年10月1日に東京などの緊急事態宣言が解除されました。ここにきての感染拡大のニュースが大きく報道される中で、もう、ずいぶん昔のことのように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、経済活動への制限がかなり緩和されたのです。
そして、景況感は一気に回復しました。「街角景気」という指標があります。図表1の数字です。「景気ウォッチャー調査」とも呼ばれますが、内閣府が、経済の最前線にいて、景気の動きに敏感な人たちを各地で調査しているのです。
経済の最前線にいて景気に敏感な人たちというのは、例えば、タクシーの運転手さん、小売店の店頭にいる方たち、ホテルのフロントマン、中小企業経営者などです。変わったところではハローワークの窓口にいる人たちにも調査しているとのことです。
「50」が良いか悪いかの境目で、50を超えていると景況感が良くなっている人のほうが多く、50を切っているとその反対です。あくまでも方向感しか示しませんが、景気が上向いているかそうでないかを結構端的に表す指標です。
2021年に入ってからの月ごとの数字を見ると、10月より前は30台、40台が続きました。とくに、8月に第5波で感染が急拡大したときなどは、30台と景況感はとても悪化しました。
それが、10月以降は、55.5、56.3と急回復しています。繰り返しますが、これは景気に対する方向感だけの数字で絶対的な大きさを表しているものではないものの、経済の最前線で働いている人たちの景況感は、緊急事態宣言解除で急回復したということです。
最近発表された12月の数字も、感染者数が比較的少なく、クリスマスや年末ということもあり、56.4とさらに改善しました。