不動産上位100社の販売額は前年同月比30%減
しかし、その状況は持続可能ではない。コロナショックの発生によって中国の雇用・所得環境は不安定化し、消費者の節約志向が強まった。それに上乗せするように、恒大集団など不動産企業のデフォルトリスクが急上昇している。購入した物件の建設が完了しないのではないかと買い控える人が増えている。
その結果、大型連休中の客足増加によって例年であれば書き入れ時といわれる9月と10月、不動産上位100社の販売額は両月とも前年同月比で30%超減少した。一部の地方政府は財政への打撃を恐れて住宅の値下げを制限し始めたが、主要70都市のうち7割超の都市で新築住宅価格は下落している。不動産セクターは中国GDPの4分の1を占めるといわれ、景気減速への影響は大きい。
3期続投が危ぶまれる習近平氏の焦り
不動産市況悪化には、習近平政権の政治が大きく影響している。習政権は長期の支配基盤の確立と一党独裁体制の維持のために、ある程度の経済成長を犠牲にし始めたようだ。
その顕著な例が、2020年夏に共産党政権が導入した不動産融資規制の“3つのレッドライン”だ。規制の強化によって中国の不動産セクターでは恒大集団などの資金繰りが逼迫して不動産市況が悪化した。唐突な不動産規制の背景には、2022年後半の共産党党大会前に不動産のバブルを鎮静化しなければならないという習氏の危機感があっただろう。党大会が近づく中で不動産価格の下落が鮮明化すれば習氏の経済運営への批判は高まり、3期続投が難しくなる恐れがある。終身支配を目指しているといわれる習氏はその展開を避けなければならない。
不動産以外の分野でも、中国の政治が経済のダイナミズムを減殺している。第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で採択された“歴史決議”では個人崇拝の禁止が削除された。習氏は、自らの力によって漢民族の繁栄を目指す考えを強めている。