議会では、債務上限引き上げ法案が成立し、デフォルトが回避された。そもそも債務上限とは、どういうことなのだろうか。またアメリカがデフォルトに陥ると、世界経済はどうなるのか。代々木ゼミナールの人気講師、蔭山克秀先生が解説する――。
米国債は発行額に上限がある
アメリカでは何年かに一度「デフォルト危機」が起こります。デフォルトとは「債務不履行」、つまり国債で借りた金が返せない、金利が支払えない、といったことで、ふつうは経済的に困窮している発展途上国や敗戦国で起こります。それが、なぜ世界一の経済大国であるアメリカで起こるのか。しかも頻繁に。答えは、アメリカ独特の「債務上限問題」にあります。
実はアメリカ政府が発行する国債には、法律で「発行額の上限」が設定されています。アメリカは経済規模が大きいだけに政府支出も大きく、税収だけでは年間予算が足りません。そこで日本同様、国債発行による借金で、不足分をまかなっています。つまりアメリカは、毎年国債を発行することで、公務員の給与や社会保障費を捻出しているのです。
ということは、もしも何らかの理由で国債発行額を増やす必要が出た場合、アメリカでは「発行額の上限拡大」をしなければなりませんが、それには法改正か新法制定、つまり議会の同意が必要です。そしてアメリカでは「議会と大統領の“ねじれ現象”(大統領は民主党、議会過半数は共和党、みたいな形)」がわりと頻繁に起こり、そういうときには議会側が大統領とのかけ引きの道具として、この債務上限への同意を持ち出すのです。つまり「大統領、もしもあなたがわれわれ共和党の要求を聞いてくれないなら、われわれは上限引き上げには同意しませんよ」ということです。
もしも議会の同意が得られなかったら大変です。国債発行による新たな借金ができなくなったアメリカは、各種支払いも滞り、本当にデフォルトしてしまいます。