「ポピュリズム」とは大衆中心の政治をいい、語源はラテン語のポプルス(=populus。人々・一般大衆)。代々木ゼミナールの人気講師・蔭山克秀氏は「ポピュリズムは、コロナ禍で多くの国民が苦しんでいるのに、国が国民の声を聞かない今のような状況で台頭しがち」だという。世界各国で生まれては消えた「ポピュリズムの歴史と、その背景」を聞いた——。
19世紀に描かれた、突撃する兵士たち
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世界初のポピュリズムはアメリカの農民政党

「ポピュリズム」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのがアメリカのドナルド・トランプ前大統領という人も多いのではないでしょうか。「メキシコとの国境に壁をつくれ!」といった扇動的な発言は、移民に仕事を奪われたプアホワイトを熱狂させました。まさに、仕事がなく苦しむ国民の声を国が聞いてこなかったことで生まれた「ポピュリズム」そのものと感じます。

コロナ禍で多くの国民が苦しんでいるのに、国が国民の声を聞かない今のような状況もまた、ポピュリズムが台頭しやすいと言えるでしょう。

もともと「ポピュリズム」という語を最初に使ったのは、1891年にアメリカで生まれた「人民党(ポピュリスト党)」という農民政党です。

当時のアメリカ社会は、産業革命のおかげでどんどん豊かになっていたのに、農民層だけが取り残され、貧困にあえいでいました。しかも当時は民主党と共和党の方向性に大きな違いがなかったため、弱者の受け皿がありませんでした。

そこで農民を支持層とする「人民党」が結党され、大統領選挙で4州・22人の選挙人を獲得するまでに勢力を拡大したのです。

最終的に人民党はなくなりますが(危機感を抱いた民主党・共和党の党改革が進み、民主党が弱者の受け皿になった)、こういう「忘れられたアメリカ人の受け皿」という流れは、現在トランプ氏を支持するプアホワイトと同じ構図であることがわかります。