言葉を重ねるよりも深くうなずいたほうが効果的な場合も
さらに私がお客さまとの会話で心がけているのは、うなずきにメリハリをつけるということ。お客さまのお話には必ず、「ああ、これがいちばん伝えたいところだな」という核心部分があります。
それまでは軽めの相づちや普通のうなずきで聞きながら、まさにその核心部分にきたときに、より深く、強く、ゆっくりとうなずくんです。そうすることでお客さまに「そうそう、ここが話の“肝(きも)”なんだよ」「由美ママ、大事なところをちゃんとわかっているじゃないか」と感じていただけるんですね。
おもしろいもので、あれこれ言葉を重ねるより、真剣な表情で無言のまま深くうなずくだけのほうが「話を理解している」という説得力が増すこともあるんです。聞き手がうなずき、それを受けて話し手もうなずく。目を見てうなずきあうだけで、お互いが話の核心を共有できたことが伝わる。
これも身体のリアクションだけで通じる心地よいコミュニケーションの完成型のひとつです。
身を乗り出すことで「ポジティブな空気感」を作り出せる
②身を乗り出す(関心、促し)――「もっと聞きたい」のサイン
「その話、もっと聞きたいです」という気持ちをもっとも端的に表す身体のリアクションが「身を乗り出す」という動作です。
人は興味や関心があるものに対しては、心も身体も“前のめり”になるものなのですね。逆に言えば、前のめりの姿勢になることで、話し手に「自分の話に乗ってきてくれた」「関心を示してくれた」という印象を与えることができるということ。そう思ってもらえたらしめたもの。会話は相手のリードで気持ちよく進んでいくことでしょう。
前のめり、身を乗り出すような前傾姿勢はポジティブな心理状態の表れでもあります。極端なことを言えば、「会話が広がりそうな、ポジティブな場の空気感」とは会話の内容というより、聞く側の姿勢によってつくり出されるものでもあるのです。
また、聞き手が身を乗り出すことでたかだか数センチとはいえ、物理的にも相手との距離が近くなります。これは話の内容に興味があることに加えて、話し手本人に対しても好意、好感、親近感を持っていることの表れにもなります。彼氏や彼女、憧れの先輩、尊敬する上司など、自分が好きな人の話を聞くとき、人は自然と相手に近づこうとするもの。
身を乗り出すというリアクションは、興味や関心に加えて、好意や親近感を示すサインでもあるのです。