「ひらがながかわいい」若手の一言で命名
「すまん」というネーミングは、「素の饅頭」と「具が入っていなくてすまん」という2つの意味を込めて名づけられた。経営層の間では賛否があったものの、浅田さんは「ひらがなの字面がかわいい」という花澤さんの言葉に基づいて「すまん」を猛プッシュ。若い世代の感性を大切にしたいという思いからだったそうだが、これが結果的に大ヒットにつながった。
若手の感性を生かした発想がすぐに経営層まで上がる環境、一度ダメでも再チャレンジしやすい風土、そしてそれらを受け入れる経営層の柔軟性──。「すまん」の大ヒットは、このすべてが融合した結果だろう。中島さんも、この商品の開発経緯を「当社らしくて面白いでしょ」と楽しそうに笑う。
社員全員で商品開発
井村屋には、こうしたアイデアを世に送り出す柔軟さに加え、おいしいと評判のレストランがあれば開発担当者を会社のお金で食べに行かせる積極性も。外で吸収してきた新しい経験と自社の技術が合致したときこそ、他社にない商品を生み出せる──。中島さんはそう考えている。
「今も、社員のアイデアを反映した商品開発会議では、会長や私をはじめ各部門の責任者が集まりコメントする機会があります。開発者の心意気やストーリーを聞きながら新商品やお菓子をたくさん食べられて楽しいですよ(笑)」
今後は、引き続き「全員開発」の姿勢で商品を進化させつつ、核となるあずき商品のグローバル展開を目指す。合言葉は「日本のあずきを世界のAZUKIに」。そのためにも男女問わずイノベーションを起こしうる人材を多く育て、同時に社会に貢献できる企業にしていきたいと語る。中島さんの、そして井村屋グループの挑戦はこれからも続いていく。
(文=辻村洋子)