今年10月、川崎重工業はバイク・エンジン部門が分社化し、「カワサキモータース」を設立した。同社子会社である「株式会社カワサキモータースジャパン」の社長には桐野英子さんが就任、四大メーカーの国内販売会社で初の女性社長になった。「漢カワサキ」とも呼ばれる特徴あるブランドを、桐野新社長はどう率いていくのか。ライターの河崎三行さんが聞いた――。
10月6日に行われたカワサキモータース事業説明会に登壇し、スピーチするKMJ新社長の桐野英子氏
写真提供=カワサキモータース
10月6日に行われたカワサキモータース事業説明会に登壇し、スピーチするKMJ新社長の桐野英子氏

「漢カワサキ」で誕生した女性の新社長

『カワサキ』ブランドのバイクを製造販売してきた川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーが、10月1日から分社化による新会社『カワサキモータース株式会社』へと生まれ変わった。独立経営とすることで意思決定のスピード向上、ブランド力強化などを目指すという。

そしてこの移行と日を同じくして、カワサキモータース製品の日本国内販売を担う『株式会社カワサキモータースジャパン(以下、KMJ)』の新社長に、桐野英子氏が就任した。

世界的な知名度を誇る、日本のバイクブランド。そのお膝元である日本国内の販売会社トップを女性が務めるのは、『ホンダ』『ヤマハ』『スズキ』『カワサキ』のいわゆる四大メーカー全体を通して史上初のことだ。

カワサキといえば昔から、アグレッシブでマニアックな製品作りで独特の存在感を放ってきた。それゆえ男性ユーザーの比率が他社以上に高いと言われ、彼らのマシンに対する思い入れもひときわ強いため、ライダーやメディアからしばしば“おとこカワサキ”と称されてきたブランドだ。その国内販売の指揮を女性が執るだけでも画期的な人事であるのに、加えて学生時代の桐野氏は東京外語大でペルシャ語を専攻していたという。

日本の二輪業界においては異色づくしの彼女は、果たしてどのような人物なのか?

どこか遠くへ行ってみたかった

札幌出身の桐野氏が進学にあたり、東京の大学で外国語を学ぶことにしたのは、故郷を出てどこか遠くへ行ってみたかったからだった。

「ただ親が非常に厳しくて、『絶対に北海道では勉強できないことを学ぶためでない限り、認めない』と。そこでいろいろ探してみると、東京外大にペルシャ語学科というのがありまして、ちょっとエキゾチックで面白そうだなというぐらいの気持ちで選んで受験したんです」(桐野氏、以下同)

晴れて合格を果たし、上京。学生生活を謳歌する中で、彼女はバイクという乗り物に出会う。