「ハードコート」で育ってきたかどうか
世界トップ男子プレーヤーのラファエル・ナダル選手のように、クレーコートの多いスペインや南米で育った選手にはクレーで強いプレーヤーが多くいます。ハードコートが基本のアメリカでも、セレナ・ウィリアムズ選手のようにやはりハードコートに強いプレーヤーを多く輩出しています。それは、幼少期から世界基準のコートサーフェスに慣れ親しむことで、そのサーフェスが主流となっている世界で戦うために必要なテニススタイルが身につくからだと考えられます。
2018年9月、日本人初のグランドスラム優勝を成し遂げた大坂なおみ選手は日本人の母親とハイチ人の父親をもつ日本人プレーヤーです。生まれは日本ですが幼少期からアメリカで育ち、ハードコートで練習をしてきました。また、10歳からアメリカに拠点を置いている錦織圭選手も、渡米後はハードコートで練習を重ねています。
日本テニス協会は幼少期から高校までの子どもたちに対して、積極的にテニスの普及活動を行っています。しかし今、世界のトップの仲間入りをしている前出の両選手の幼少期の練習環境と、日本を拠点に強化に取り組んでいるジュニアたちの練習環境には大きな違いがあります。それは、ハードコートで育ってきているかいないか、ということ。これは言い換えれば、世界と日本のコートサーフェスの違いであり、ハードコートが主流の世界に比べ、日本は砂入り人工芝が主流となっているのです。
高い打点でのプレーに不慣れな日本選手
世界のトップレベルで活躍している錦織圭選手、大坂なおみ選手でさえ、サーフェスに関係なくボールを打つ位置が肩のあたりになるとパワーのあるボールを打つのが難しくなります。パワーのあるボールで相手を攻め込んでゲームの主導権を握っているときには、パワーが伝わりやすい打点で打てていることが多い、と言えるでしょう。しかし、世界レベルの試合ともなれば対戦相手も相手の嫌がるところへ打ってきます。
例えば、全仏オープンのレッドクレーで、ヨーロッパの選手はよく回転量の多いボールを頻繁に打ってきます。このボールはバウンドしてからもスピードが落ちないため、相手の日本人選手はベースラインから後ろに下げられ、高い打点で打たされることになります。これは日本人選手がそうしたプレーが苦手なことを知っているからに他なりません。
テニスの長い歴史をもつヨーロッパの選手たちは、幼少期から常日頃レッドクレーで練習を積み重ねてきています。一方、日本人選手は低いバウンドしかせず、ボールのパワーやスピードすら奪われてしまう砂入り人工芝で育ってきているのです。このように練習してきたサーフェスの違いは大きく、そう簡単に克服できる問題ではありません。