選手が育たない一因は日本のコート事情にある

振り返ってみれば、私はテニスを始めた6歳の頃からアンツーカーと呼ばれるレッドクレーコート、ハードコート、学校のグラウンドによくある茶色のクレーコート、砂入り人工芝コートと多種なサーフェスで育ってきました。それでもなお世界と向き合うには十分ではなく、かなりの時間と努力が必要でした。

こうしたことから感じたのは、「練習環境(サーフェス)とプレーヤーの成長には密接な関係がある」ということ。日本の女子テニスプレーヤーがテクニックはあるのに世界で活躍できないのは、日本のコート事情が一因なのではないか、ということです。これこそが私がこの研究を始めた理由です。

実際に、女子日本人テニスプレーヤーの過去の世界ランキングを見ると、2016年には、奈良くるみ選手、大坂なおみ選手、土居美咲選手、日比野菜緒選手、尾崎里紗選手の5人がトップ100にいた年があり、さらに1990年代にはトップ100に10人ほど入っていた年もありました。しかし2018年では、トップ100にランクインしているのは近年大きく飛躍した大坂なおみ選手のみ、トップ200には日比野菜緒選手、土居美咲選手、奈良くるみ選手、清水綾乃選手の4人のみ(図表1)。

若手選手が育っていないのが今の日本テニス界の現状なのです。

グランドスラムのサーフェス事情

前述したとおり、テニスコートのサーフェスはプレーヤーの成長に大きな影響を及ぼすと私は考えています。そこで、ここでは世界各国のテニスコート事情について見ていきたいと思います。

世界トップ選手が目指すグランドスラム(国際テニス連盟が定めた4大大会の総称)の状況を示したのが(図表2)。天然素材を基本としている全英オープンは昔からずっと天然芝コート、全仏オープンはレッドクレー、全米オープンと全豪オープンは天然芝から人工素材をベースとしたハードコートへと変化しています。

テニスの歴史を遡ると、4大大会のいずれも始まった当初は天然芝やレッドクレーといった自然素材のサーフェスが使われていました。

聖地ウィンブルドンは今でもなお、品種改良を続けながら天然芝のコートを維持し続けています。しかし、全米オープンはコートの老朽化や政策の関係から1978年に場所を移し、同時に維持費がかかるグリーンクレーから均一性に優れたハードコートに。それを受け、全豪オープンも1988年にハードコートへと変わりました。