参加41大学中、来る正月の“本戦”に出場できるのは10大学だけ――。箱根駅伝予選会は今秋もデッドヒートが展開された。スポーツライターの酒井政人さんは「昨年の予選会は12位で敗退し、本戦出場を逃した中央学院大の川崎勇二監督(59)は、選手やチームのため、また大学のために身を切る決断をした結果、今回7位で入り、箱根に戻ってきました」という――。
練習中のマラソン選手の足元
写真=iStock.com/Alex Liew
※写真はイメージです

41大学が本戦出場「10枠」を巡って大激突した箱根駅伝予選

10月23日に行われた箱根駅伝予選会。正月の本戦に出場を許されるのは、参加した41大学のうち10大学のみだ。駅伝の予選会は、ハーフマラソンを484人の選手が一斉に走り、各大学上位10人の選手の合計タイムが速い順に勝ち抜けして、本戦に出られる。

この日、ゴールまでラスト約1kmの直線は強い向かい風が吹いていた。終盤、フラッシュイエローと呼ばれるビビッドなカラーのランシャツに黒タイツ姿の選手が懸命に腕を振った。中央学院大学・栗原啓吾だ。向かい風にあおられフラつきながらも、栗原は日本人トップでゴールに飛び込んだ。

結果発表の時間。それは天国と地獄を分ける。合計タイムが10位以内なら天国、11位以下は地獄だ。これまでの1年間の努力はすべて水の泡だ。

「7位、中央学院大学」

アナウンスが聞こえると栗原の笑顔が弾けた。

「予選会を通過するだけでこんなにうれしいかというくらい素直にうれしいです。最後はもう体力が残っていないくらい出し切りました」

主力4人がメンバーから外れながらも予選会を突破し、2年ぶりとなる箱根駅伝へ向かうことになる。予選会から4日後、川崎勇二監督(59)に予選通過した感想を尋ねると、「正直、ホッとしています」という言葉が返ってきた。

短いコメントだが、重みがあった。なぜなら、昨年の予選会はまさかの落選。川崎監督は嫌というほど“地獄”を見たからだ。そこから1年。中央学大はいかにして這い上がり、生き返ったのか。この365日間の取り組みと、川崎監督の“覚悟”をお伝えしたい。