輸入物価、企業間物価は高騰中…悪いインフレが始まる

しかし、同じ期間の日本の輸入物価や企業物価の状況を重ね合わせると、見える風景が変わってきます。

図表2で明らかなように、輸入物価は、ここ数カ月間は30%前後の上昇をしています。それに呼応するように、企業の仕入れ価格を表す企業物価は5%程度の上昇をしています。9月には6%台です。

消費者物価指数との対比

つまり、何が起こっているのか。企業の仕入れは大幅上昇しているのに、景気の足腰が弱いために最終消費財の価格に転嫁できない状況が続いてきたのです。

しかし、企業のほうも収益の悪化は避けなければならず、秋以降、値上げが相次いでいます。例えば、松屋が牛めし価格を並盛で60円と大幅上昇させたのに続き、吉野家も牛丼並盛の30円程度の値上げを発表しています。

また、小麦価格なども大幅上昇していることから、小麦製品も値上げ、さらには、皆さんもよくご存じのように、ガソリン価格もここにきて2カ月以上上昇を続けています。ガソリン価格の上昇は、原油価格がバレル80ドルを超える高値が続いているからです。

これらの価格上昇は、コロナの影響から欧米経済が立ち直りつつあることで、需要が大きく伸びたことが原因しています。また、タイなど東南アジアなどではコロナの影響により、自動車の部品生産や農産物・海産物の生産が滞っている地域もあるからです。さらには米中の摩擦から、思うような物資の移動ができていないということもあります。

原油価格については、今後北半球では冬場を迎え原油や天然ガスの需要が増えることや、先ごろ行われたOPECプラスでも、産油国の思惑としてはこの高値を維持するためにも生産増を行わないことが決定され、しばらくは現状の価格が維持されるか、場合によってはさらに原油価格が上昇することも懸念されます。

いずれにしても、世界中の同時進行的に進む脱コロナの経済回復の動きが大きな原因です。

日本も今後は、インフレ率が上昇する可能性が高いのではないでしょうか。インフレ率が上昇すると、インフレ目標を2%に置いている日銀は、「政策が功を奏した」といったコメントをするかもしれません。

しかし、このインフレはいわゆる「コスト・プッシュ」と呼ばれる仕入れ価格の上昇によるものです。もっと言えば、値上げ分のかなりの部分が海外に行ってしまう「悪いインフレ」です。

良いインフレは、雇用が増加し、給与が伸び、それにより需要が上がって、ものの値段が上がる「ディマンド・プル」のインフレです。悪いインフレがきても喜べないのは当然で、日銀の政策とは関係ないところで起こっているものです。