いざというときの備えとして、民間の生命保険や医療保険は本当に必要なのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「サラリーマンが加入している社会保険で人生のリスクはほぼカバーできる。生命保険に加入している人はすぐに見直したほうがいい」という――。

※本稿は、荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

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何も起こらなければ、ただただ保険料を支払うだけ

日本人は無類の保険好きです。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2018年)によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は88.7%、医療保険の加入率は88.5%、一世帯当たりの年間払込保険料(個人年金保険の保険料を含む)は平均38.2万円と、月約3万2000円を保険につぎ込んでいる計算です。

こんなに多くの人々が保険に多額のお金を使っているなんて……。貯蓄があるのに高額な保険に入っている人をよく見かけますが、それは意味なしです。

私は、原則、生命保険も医療保険もそれほど多くは必要ないと思います。そもそも、生命保険とは、自分の健康や命を賭けた「賭け」です。

保険は死亡や病気、ケガ、事故に遭うなど「不幸くじ」を引き当てることで保険金がもらえます。不幸を心配ばかりして保険で備えると、保険料はどんどんかさんでいき、何も起こらず健康に過ごせれば、その間の保険料はすべて無駄になります。

例えば、死亡保障の基本的な保険の仕組みは、「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助のシステムを作り、そのシステムの加入者が死亡した場合、その人にみんなから集めたお金がいくようにみんなでお金を出すというもの。

仮に100人のグループで、死亡保険料を毎年1人1万円ずつ集めるとします。すると年間100万円が集まり、胴元である保険会社が収益と運営費を差し引いた額が、その年に亡くなった人に渡されて終わります。

亡くなる人が少なければ、配当という形でその年に保険料を支払った人に返され、そこで清算されます。つまり、一年ごとのクジのようなものです。