よく歯磨きをするだけでは歯周病は防げない。大阪大学大学院歯学研究科の天野敦雄教授は「歯周病は『史上最大の感染症』としてギネスブックに認定されており、全世界で患者は増え続けている。主な感染ルートは唾液感染で、食事のシェアやキスなど生活習慣のなかで感染が広がっている」という――。(第1回)

※本稿は、天野敦雄『長生きしたい人は歯周病を治しなさい』(文春新書)の一部を再編集したものです。

歯科検診を受ける若い女性
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歯周病は「人類史上最大の感染病」

2017年に厚生労働省が実施した「患者調査」によると、日本国内における歯周病の患者数は398万3000人。歯周病は今や400万人にとどく国民病です。

ただし、これは歯科で治療を受けている患者の数ですから、歯周病が未治療の人が多いことを考えれば、実際の数ははるかに多いことになります。歯周病が国民病なのは、万国共通。これが世界に向けてユニークな形で発信されたのは、21世紀に入ってすぐのことでした。

なんと、ギネスブックに「地球的規模で蔓延している、人類史上最大の感染症」として公式認定されたのです。登録されたのは2001年。そこには、「地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記されました。それから20年経った現在も、歯周病の患者が減ったという報告はありません。

歯周病が感染症であるということは、歯みがきの仕方が悪い人だけがなる病気ではないということです。感染ルートで一番多いのは、唾液感染なのです。

キスやハグが日常的な挨拶になっている欧米では、「歯周病感染の主な原因はキスである」と歯科の教科書にはっきり書かれています。そう断定できるのは、彼らはそれ以外に他人の唾液が口のなかに入る機会がまずないからです。

ところが、日本はこれに当てはまりません。むしろ、唾液感染のリスクは日本特有の要因でさらに高まるからです。