ここへきて厚労省がワクチン接種後の心筋炎の注意喚起し始めた
全ての都道府県で緊急事態宣言が解除されて、約3週間が経過した。猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)デルタ株による第5波の新規感染者数は今も減り続けている。
第5波制圧に最も有効だったのはワクチンであろう。2021年春に高齢者から始まったワクチン集団接種によって、日本国民の66.1%が2回接種を終了しており(10月15日、参照=首相官邸HP)、現在は基礎疾患のない若者への集団接種が施行されている。
しかし10月15日、ワクチン接種を予定している若者に気になるニュースが発表された。厚生労働省が次のようにホームページで注意喚起したのだ。
「メッセンジャーRNA(以下mRNA)ワクチンを接種した後、心筋炎・心膜炎の発症事例が報告されている」
「中でも、10~20代男性・モデルナ社ワクチンではリスクが高い」
接種後の死亡という事例で記憶に新しいのは、プロ野球の中日ドラゴンズ・木下雄介投手のケースだ。6月28日にコロナワクチンの1回目の接種を受け、7月6日の練習中に息苦しさを訴えて緊急入院、8月3日に死去した(享年27)と報道されている。詳細な病名や症状の経過は非公開だけに、多くの人が気になっているニュースではないだろうか。
そこで本稿では、ワクチン後の心筋炎を早期発見し、重症化させないためのポイントを改めて整理してみよう(参照:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院HP、以下同)。
mRNAワクチンは今回のコロナ禍で初めて実用化されたタイプのワクチンである。コロナウイルス表面にあるトゲトゲ部分の設計図となるメッセンジャーリボ核酸(mesenger Ribo-Nucleic acid:mRNA)を脂質膜で包んだ製剤である。
このmRNAワクチンを接種すると、人体内ではmRNAを基にウイルス表面のトゲトゲが産生され、さらにトゲトゲに対する抗体も産生されるので、コロナウイルスへの免疫を獲得できる。ウイルスそのものを注射しているわけではないので接種してもコロナ感染することはなく、接種後数日間で分解されるので人間のDNAに組み込まれることはない。
日本で公認されているコロナワクチンは、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社の3種であり、前2社がmRNAワクチンである。発症予防効果は、ファイザー社が約95%、モデルナ社が約94%と、アストラゼネカ社製の従来型(ベクター)ワクチン約70%に比べて高い効果が報告されている。
なお、開発者のカタリン・カリコ氏はハンガリーから米国へ移民した女性研究者であり、mRNAワクチンの実用化でノーベル医学生理学賞が確実視されているが、2021年の選考には間に合わなかったようだ。