ウイルス性心筋炎・心膜炎とは?~心筋梗塞や心筋症とは別物~

心筋炎・心膜炎とは耳慣れない病気だが、心臓の筋肉の炎症を「心筋炎」、心臓を包む膜の炎症を「心膜炎」という。心臓の血管が詰まって心筋が動かなくなる「心筋梗塞」、心臓の筋肉が徐々に衰えてゆく「心筋症」とは別の病気である。

心筋炎の原因として最も多いのがウイルスであり、「ちょっとダルい」程度の軽症例から、急激にショック状態となりECMO(エクモ)が必要になるような劇症型心筋炎までさまざまなレベルがある。経過としては、まず「熱・咳」などの風邪症状があり、その数日後に心筋炎・心膜炎を発症するパターンが多い。原因としてはコクサッキーウイルスやインフルエンザウイルスによるものが多いがコロナウイルスやエイズウイルスによる心筋炎も報告されている。

そして確率は低いものの、今回のコロナワクチン(mRNAワクチン)接種後にも心筋炎・心膜炎の発症例が報告されるようになった。コロナワクチン先発国のイスラエルはこのように報告している(Myocarditis after BNT162b2 mRNA Vaccine against Covid-19 in Israel: NEJM Oct 6, 2021)。

「510万人にコロナワクチン接種したところ、ファイザー社ワクチン接種後の心筋炎が136例確認、うち129例(95%)は軽症だったが、1例は劇症型で死亡」
「若年・男性・接種2回目は高リスク」

さらに、厚生労働省によれば、同じmRNAワクチンでもモデルナ社のほうがファイザー社ワクチンよりも、心筋炎発症率が高いことが、判明している。10代男性に限定すればモデルナ社はファイザー社の7.8倍の報告数がある(図1参照)。

心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度(100万人接種当たり)
国内で心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度(100万人当たり) 出典=厚生労働省 新型コロナワクチンQ&Aより

こうした流れを受けて、10月上旬にスウェーデンでは30歳以下、デンマークは18歳以下へのモデルナ社ワクチン接種停止を発表している。

とはいえ、ワクチン後心筋炎の大部分は軽症であり、自然に軽快する。またワクチンを打たずにコロナ感染した場合の心筋炎発生率よりも、ワクチン後の心筋炎のほうが頻度も低い(図2参照)。よって、心筋炎のリスクを考えても、ワクチン接種そのものを回避する必要はない。

心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度の比較(男性)