歯ぐきからの出血は危険信号
ここまで歯周病が生活習慣病であり、感染症でもあることをお話ししてきました。歯周病は歯ぐきの炎症が進むと完治がむずかしくなり、最後には歯がドミノ倒しのように次々と抜け落ちてしまう。これは、健康寿命にかかわる大きな問題です。しかし、歯周病の本当の怖さは、それで終わらないことなのです。
歯ぐきから出血が起きると、歯周病菌は全身に広がるようになります。それがきっかけとなり、歯とはまったく関係のない重大な病気が起こりやすくなってしまうのです。そこには命にかかわる病気も数多く含まれます。
自分が歯周病であることに気づかないまま今も放置している人は、将来的に自分の歯がなくなる可能性が高いだけでなく、そういった別のさまざまな病気のリスクも上がり続けているということになります。
歯周病と全身の病気との関連性は、現在も世界中で研究が進んでいるところですが、まだすべてが解明されているわけではありません。なぜその病気が起きるのか、すでに科学的に明らかになっている病気と、関連があることはわかっていてもその因果関係までは明らかにされていない病気もあり、それらを合わせると、100種類を超えるとも言われているのです。
心筋梗塞のリスクは約3倍に
この事実を広く知ってもらおうと、日本歯科医師会では、患者さんに向けたビデオを作成しています。すでに歯科の外来で歯科衛生士さんから定期メンテナンスを受けている方は、ご覧になったことがあるかもしれません。
このビデオのなかでは、歯周病菌に感染したまま放置するとどうなるのか、全身の病気のリスクがどれほど高くなるのかが簡潔にまとめられています。ざっとご紹介すると、「心筋梗塞のリスクは2.8倍に、脳卒中の罹患率は20%ふえ、早産のリスクは7倍に上がる。
また、歯周病は糖尿病の合併症でもあり、膵がんのリスクは1.6倍になる。さらに、歯周病があると脂肪がふえて太りやすくなる、高齢者の死因で多い誤嚥性肺炎との関連性も高い」というショッキングな情報が詰め込まれています。
多くの人があまり気にせずに放置している歯周病は、これほどさまざまな病気を引き起こす可能性が高いのです。