もしドイツで「安定収入のない男性とは結婚できない」という発言をしたら、周囲から「計算高い女だ」と言われてしまうでしょう。もちろんドイツでは「結婚を相手の収入で決める」ことがないわけではありません。でも決して堂々と言っていいことではありません。

その根底には「結婚は恋愛の延長である」「愛はお金では測れない」といった社会の共通認識があります。そういった意味でドイツの人のほうが結婚について「ロマン」を求めている気がします。

砂浜でプロポーズ
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ハッキリ言わない日本人、相手の条件にはウルサイ

日本に住むヨーロッパ出身の友人が驚くのもこの点です。一般的に日本人は「はっきりと物を言わない」と思われています。ですが、こと「結婚」となると、欧州には見られないような直接的な言い方で「相手の条件」をハッキリと語る人が多いのです。

日本では、婚活中の男性が「子供が欲しいので、相手の女性は20代を希望している」と発言することは普通にあり得るでしょう。筆者はこれを正直だと思います。しかし、ドイツを含むヨーロッパでは、この手の発言はバッシングの対象となり、堂々と口にする男性はまずいません。

婚活中の女性が「高収入の男性でないと結婚は無理」「結婚相手には安定した収入を望む」といった発言をすることも日本では「普通」ですが、ドイツであれば繰り返しになりますが「計算高い女性だ」と言われてしまうわけです。

王女の結婚相手は月給11万円のトレーナー

かつての日本は「お見合い結婚」が全体の7割を占めていましたが、現在は全体の5%程度です。つまり今の日本では「恋愛結婚」がスタンダードとなったのです。

それでも結婚相手に金銭面なども含めた「条件」を突き付けることが多いのは、昔の「お見合い結婚」の文化の名残なのかもしれません。日本では年齢が高い人のほうが「男性の収入」を重要視する傾向がある印象です。

しかし結婚後も「女性が働く」ことが前提となっている欧州では、結婚の際に「男性の収入」にばかりスポットがあたることはありません。それは王室に関しても同様です。

例えばスウェーデン王室・ヴィクトリア王女の事例です。結婚相手のダニエル・ベストリングさんは、王女がかつて通っていたスポーツジムの専属スポーツトレーナーで、月給11万円でした。このことについて当時、欧州の大衆紙は「おいしい話題」として記事で頻繁に取り上げたものの、2人の結婚の障害になるような騒動には発展せず、2010年に2人はめでたく結婚します。

スウェーデン王室・ヴィクトリア王女
(写真=Frankie Fouganthin/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons)
スウェーデンのヴィクトリア王女(左)とダニエル王子