「『いつ辞めようか』と常に考えていました」。意欲満々で入社し、志望した業務の担当に大抜擢されて順風満帆に思えた矢先、予想外の出来事に心が大きく揺れたと話すのは小林製薬 医薬開発部 臨床開発グループ 課長の御厨尚子(みくりや・なおこ)さん。葛藤の日々で、御厨さんが絶えず「働く意味」を問い続けた先にあったものとは――。
入社とともに「出産は実績を積んでから!」宣言
「液体ブルーレットおくだけ」「ブレスケア」「のどぬ~る」「熱さまシート」など、ユニークなネーミングとともに、長く家庭で愛用されてきたものが多い小林製薬が掲げるスローガンは、〈“あったらいいな”をカタチにする〉こと。暮らしの中から生まれるアイデアを活かす社風に魅かれたという御厨さんは、今でも新人時代の思いがよみがえるという。
「入社時の研修では、『しっかり仕事の実績を積み、復帰を望まれる人材になってから出産する!』と宣言しました。それまでに自分自身が納得できる成果を出さなければという思いがあったんです」
予想外の妊娠と、期待してくれていた上司への報告
2001年に大阪本社の小林製薬へ入社。研究・開発職として、洗浄・家庭用品グループに配属された。今でこそ男女共に担当している業務だが、当時はまだ、ブルーレットの開発は力仕事で危険な作業もあるため、男性が担当するのが通例だった。しかし、御厨さんは熱烈に志願。その思いが通じてか、上司が部長会で「御厨にやらせてください!」と推してくれ、担当できることになったという。
この年、同期の男性と結婚。仕事にも意欲満々で取り組んでいたが、思いがけず妊娠したことがわかる。うれしさはあっても、心は大きく揺れたという。
「まだ何も実績を積んでいないという焦りがあり、わたしを推薦くださった上司には申し訳ない気持ちでいっぱいでした。叱られても仕方ないと思っていたのですが……」
上司はとても喜んでくれ、グループの先輩も身体を気遣ってくれた。社内の女性の先輩たちは出産激励会を開いてくれ、育児と子育ての両立のコツを教えてくれた。