欧州サッカー選手権決勝で6万人の観客を「テスト」
7月11日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで欧州サッカー選手権の決勝戦が行われ、大規模スポーツイベントにおける感染状況をテストするという名目で、約6万人がマスクなしで観戦した。この様子が日本でも報道され、英国ではもうマスクを着用しなくなったと誤解されたようだ。
筆者に言わせれば、スタジアムで観戦した人たちは、平均的な英国人とはちょっと違うタイプの人々だ。元々英国は、「フーリガン」と呼ばれる、熱狂的で暴徒化しやすいサッカー・ファンの本場である。
6700万人強の人口がいれば、コロナに感染してもいいから決勝戦を観たいとか、自分はワクチンを2度接種しているからもうコロナに感染しないとか、自分は若いしコロナは風邪の一種だから恐れる必要はないとか考えている人たちが6万人(すなわち1,100人に1人)くらいいても不思議はない。
高い接種率でロックダウン規制の大半を解除
筆者が住む英国は、コロナワクチンの接種率が先進国中トップクラスで、成人(18歳以上)の88.2%が1回目の接種を受け、2回の接種を受けた人も70.8%に達している。
18歳未満の子どもについては、感染しても重症化リスクが低いと考えられるため、これまで大人への接種が優先されてきたが、今後、神経系障害、ダウン症、免疫低下などのために重症化リスクが高い子どもにも接種が進められる見込みである。
英国のワクチン接種は保健省とNHS(国営医療サービス)が開始の約1年前から周到に準備を進め、昨年12月8日に始まった。医療・介護従事者、80歳以上、介護施設入居者、基礎疾患のある人が最優先で、それ以降は厳格に年齢順で実施され、1月9日に94歳のエリザベス女王、3月19日に56歳のジョンソン首相、4月29日に42歳のハンコック前保健相、5月18日に38歳のウィリアム王子が、それぞれ1回目の接種を受けた。
プログラムはNHSが一元管理しており、日本のように自治体や職域を巻き込んだりはしていない。不法移民でも予約なしでワクチン接種を受けられるワクチンバスも巡回させ、ロジスティクスは完璧といえるくらい徹底している。