逆に相手の気をそらす環境づくりにも有効
「アテンション・コントロール」は相手の注意をそらす方向にも活用できます。
こちらの話す内容、スピーチの論理展開が磨かれている場合は相手の注意力が増しているほど説得しやすくなりますが、論理的におかしな点があるとき、突っ込みどころが多い場合には逆に反感や疑念を持たれることになります。
たとえば、プレゼンや上司への報告、あるいはプライベートで人を説得する場面などで「ここはデータが少ない」「ここはエビデンスが弱い」「この話題はあまり気にせず、結論だけを受け入れてくれないかな」といった部分があったとしましょう。
つまり、自信のない論点についてスルーしてもらいたい。そんな願いもアテンション・コントロールをうまく使えば、クリアできます。
ポイントは意図的に聞き手の注意力を下げること。来場者の注意力や判断力を低下させる狙いを持つ集まりでは、会場の室温を高くし、人々を密集させ、大音量で音楽を流すという例を紹介しましたが、こうした気をそらす環境づくりも有効です。
赤ちょうちん的な居酒屋は好感度アップに最適?
たとえば、上司から「後輩に仕事の説教をしておくように」と言われ、汚れ役を引き受けざるを得ないようなケース。上司には何らかのアクションを起こした報告をしなくてはいけないので、会って話した事実が重要なのであれば、できるだけざわざわした店を選び、後輩を連れていきましょう。
昭和の赤ちょうちん的な居酒屋で酎ハイを飲みながら、改善すべきことを伝えつつ愚痴も言い合い、「まあ、がんばろう」と。注意力が散漫になる環境ですから、あなたから注意を受けたことによる悪印象は後輩に残りません。
しかも、極端に嫌われる態度を見せなければ、単純接触効果が働いて後輩からのあなたへの好感度はむしろ上昇。上司には「2時間話してわかってくれました」と報告できます。
重要なのは、聞き手の注意をそらすことです。
・プレゼンであれば、論の弱いところで照明を落とし、プロジェクターに写真や図版を映す
・上司への報告であれば、個室ではなくオフィスフロアで上司が忙しくしている時間帯にあえて時間を取ってもらう
アテンション・コントロールを使えば、相手にあなたの論点で一番強く印象づけたい部分を強調することもできれば、逆に注目してほしくない部分をスルーさせることもできるのです。