スマホはしまって、聞き手の注意を一点に向ける
スマホは引き出しの中にでもしまってください。窓の外を通る人がいるならカーテンを閉じましょう。室温は暑くもなく寒くもない快適な温度に。テレビやラジオは消し、余計な音のない状態にして、静かにゆっくりと語りかけてください。
すると、聞き手は無意識のうちにあなたの話に集中し、その内容についても深く理解しようと努力してくれます。
もし、あなたが普段から「こちらが真剣に話しているのにいまいち伝わらない」という悩みを持っているなら、話をする環境をチェックしてみてください。聞き手の気をそらす要素があり、聞いているつもりが無意識のうちに聞き流してしまっているケースは多々あります。
「何度言ってもわかってくれない」と落胆し、相手を見限る前にアテンション・コントロールを試してみましょう。
ミニマリストと呼ばれる人たちが自分の周囲から余計な持ち物を減らし、集中力をコントロールしているように、聞き手の注意が一点に向くよう仕掛けていくのも影響力を高めたい話し手が覚えておきたいテクニックとなります。
曜日、時間、場所、飲み物を整えて、相手の納得を引き出す
自分の話をしっかり聞いてもらいたいとき、相手によく理解してもらって次の行動につなげたいときなどは、今、紹介したミニマリスト的な環境を作る「アテンション・コントロール」が有効です。
また、可能ならば話す時間もケアしましょう。
相手の判断力が高まり、集中した状態で聞いてもらいたいと思うなら、血糖値が上がり、脳への血流も増え、注意力が高まってくる食後30分以降が狙い目です。
たとえば、職場の後輩に真剣なアドバイスをするなら、ランチを済ませ、少し歩いて腹ごなしの移動をしたあと、なるべく静かな場所でコーヒーなど温かい飲み物を手にしながら、ゆっくりとした口調で話しましょう。
ちなみに、温かい飲み物を勧めるのは口と手から伝わる温かさが対話する相手の印象をよくしてくれるからです。不思議なもので、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究によると、冷たい飲み物を手にしていると話している相手のネガティブな印象に注目するようになり、温かさを感じているとポジティブな印象が膨らんでいくことがわかっています。
また、人間の注意力にはアップダウンがあり、いつも一定ではありません。週末が休日のビジネスパーソンの場合、1週間のうち月曜日の朝が最も注意力が低くなり、金曜日の夜が最も高くなります。理由は単純で、仕事のプレッシャーから解放され、休日が待っているからです。
そう考えると、後輩に真剣なアドバイスをするベストなタイミングは、金曜日のランチ後だと言えるでしょう。
このように、同じメッセージでも環境次第で聞き手への浸透度は大きく変わってしまいます。無意識を動かし、影響力を高めるためには、話の内容だけでなく、周辺環境にも目を向ける必要があるのです。