ネガティブで注意を集めて、ポジティブで納得させる

もう1つ、別のアプローチでの「アテンション・コントロール」の使い方を解説します。

コミュニケーションを取る環境ではなく、話の組み立て、伝えるメッセージの順番に気をつけ、相手の注意を引きつけるやり方です。

ロンドン大学が過去に行なわれた「影響力」と「説得力」に関する約300件の文献をレビューし、他人に影響力を与えるために必要な要素をまとめた研究によると、「同じメッセージを伝えるときは、ネガティブな情報よりもポジティブな側面を強調したほうが人は納得しやすくなる」ことがわかっています。

しかし、感情の伝播でんぱ力を調べた研究ではポジティブな感情よりもネガティブな感情のほうが、6~7倍の伝播力があることも確かめられています。人はポジティブとネガティブなら、ネガティブな情報に注意を向けやすいのです。

・納得しやすいのはポジティブな情報
・注意を向けやすいのはネガティブな情報

この2つは、一見矛盾しています。

では、このロンドン大学の研究の成果はどのように活用すればいいのでしょうか。

そのポイントとなるのが、ネガティブで注意を集め、ポジティブで納得させることなのです。

「あなたの仕事の仕方は、時代遅れかもしれません。でも安心してください。流行が巡るように、芯のある時代遅れの取り組みは『古典』として再評価されるときが必ずきます」

「あなたは口にしていませんか? 婚活では、絶対に言ってはいけない5つのNGワードがあります。聞いた途端、相手の気持ちが冷め切ってしまう言葉ですが、実は『なぜ、言ってはいけないか』を理解すると、劇的にあなたの印象をよくすることもできるのです」

「5千万円の損を抱えたとき、もう株はやめると決めました。でも今、その心境は大きく変化しています。株式投資が悪かったのではなく、私のやり方に問題があったと気づいたからです。今日は、損をする痛みとともに身につけた投資の手法についてお話します」

語り始めにネガティブ目線の表現を入れることで、聞き手の注意を引くことができます。

「どうなの?」「どうなるの?」と一旦落とし、「こんなふうに思ったことはありませんか?」「うん、あるある」とネガティブな共感を集めます。

すると、聞き手の心に「どうしよう?」という不安が顔を出します。そこで、「でも安心してください」とポジティブな解決策を提示し、「気づいたあなたは大丈夫です」という流れに持っていきましょう。

引きつけはネガティブで、説得はポジティブで
出所=『超影響力